2023.10.13
北海道(札幌以外)を舞台にした文学作品たち
こんにちは。リージョナルキャリア北海道スタッフです。
秋といえば、「読書の秋」ですね。
「地元」から着想し、土地に由来がある文学作品を紹介するシリーズ。前回は札幌市を舞台にした作品をご紹介しましたが、今回は札幌市以外の北海道を舞台にした文学作品をいくつかピックアップしました。
『氷点』三浦綾子(朝日新聞出版)
舞台:旭川
北海道の作家、と聞いて真っ先に思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
三浦は旭川市出身であり、この『氷点』は新聞の懸賞小説に応募して入選し、そのまま大ベストセラーになった代表作です。
メディアミックス展開もされており、映画やドラマでも楽しむことができます。
キリスト教の「原罪」をテーマとした本作。人間の「嫉妬」や「憎悪」などをリアルな手触りある筆致で描いています。
家族からの徹底した排斥に立ち向かう主人公・陽子の姿に感情移入すればするほど、陽子が自分の「原罪」に気付いた瞬間に読者もはっとさせられます。
『起終点駅(ターミナル)』桜木紫乃(小学館)
舞台:釧路ほか
直木賞作家・桜木紫乃による、北海道各地を舞台にした6つの作品からなる短編小説です。この作家にとっては初めて映画化された作品でもあります。
孤独な登場人物たちを中心に、その寂しさや、ふとした瞬間の人との繋がりの暖かさを描いた本作。
作品全体に北海道らしい冬に似た厳しい冷たさが漂うのと同時に、読了後は不思議な温かさが心に灯ります。
作中では釧路や函館、道央圏など複数のエリアが舞台となっています。
『物語のおわり』湊かなえ(朝日新聞出版)/小樽、網走、ほか
舞台:小樽、網走ほか
主人公の恵美は田舎町のパン屋の娘。小説家になる夢を持ち、婚約者を置いて、自分で執筆した物語である「空の彼方」を抱えて北海道の一人旅へと繰り出します。
短編連作形式をとっており、結末が描かれていない物語がさまざまな人の手に渡り、その人の背中をそっと押していく様子には、心が温まることでしょう。
途中、読者まで「これはどんな結末になるのだろう?」とドキドキさせながら、最後に見事な決着を見せるのは流石の一言です。
読了感もスッキリした読みやすい作品で、北海道旅行に行きたくなることでしょう。
『最後の卒業生』本田有明(河出書房新社)
舞台:夕張
書影:「版元ドットコム」より(最終閲覧日:2023年10月13日)
財政破綻に陥った夕張市で、閉校になる中学校の最後の卒業生となった中学3年生にフォーカスを当てた作品。ドキュメンタリーではありませんが、実在の学校がモデルになっています。
一人の視点ではなく、複数の立場に視点を置くことにより、当時それぞれが置かれた複雑な心境に想いを馳せることができます。
中学生ならではの純粋さやもどかしさ、今の自分にできる精一杯をやり切ろうという爽やかさに心が打たれる作品です。
『さいはての彼女』原田マハ(KADOKAWA)
舞台:女満別ほか
敏腕経営者の主人公は、ある時恋愛も上手く行かず、仕事も躓いてしまい、一念発起して一人旅へ。沖縄旅行のつもりが、取ったチケットはなぜか女満別で......というような、女性と旅、そして再生をテーマにした短編集です。
旅先で出会う人との些細な交流や暖かさが心にじんと染み渡る、読後感の爽やかな作品が集まっており、鮮やかな風景描写には自分がまるで北海道を旅しているような心地を味わえます。
ちょっと泣きたいな、という時にお勧めの読みやすい一冊。
『海猫』谷村志穂(新潮社刊)
舞台:函館
書影:「新潮社」より(最終閲覧日:2023年10月13日)
第10回島清恋愛文学賞を受賞、2004年には映画化もされた作品です。
函館に暮らす美輝は、母親・薫の醜聞が原因で婚約を一方的に破棄されてしまい、母親との関係性にヒビが入ります。
一方の薫も、ロシアと日本のハーフであり、とびぬけた美貌が原因で逆に息苦しさを覚えていました。薫は精神的に追い詰められていき、太平洋へと足を向けます。
親子三代の心の葛藤や不安定さを見事に書ききった本作は、北海道の冬に似た冷たい空気を漂わせながらも、最後は希望を覗かせる終わり方になっています。前半は特にドロドロとした暗い展開が続きますが、どんどん続きを読みたくなる力のある作品です。
『優駿』宮本輝(新潮社)
舞台:新ひだか町(静内町)
競馬を題材にした小説。北海道の小さな牧場に生まれた一匹のサラブレッド(オラシオン)を中心に、牧場主、馬主、騎手など、さまざまな関係者の視点でめまぐるしく描かれる物語です。
競馬や牧場に馴染みがない方でも読みやすく、いつの間にか引き込まれてしまう登場人物たちが魅力で、群像劇のようでいて、それぞれのキャラクターが丁寧に描かれていき、感情移入がしやすい作品となっています。
『優しい時間』倉本聰(理論社)
舞台:富良野
書影:「版元ドットコム」より(最終閲覧日:2023年10月13日)
こちらは小説ではありませんが、北海道が舞台なのでご紹介します。
2005年にフジテレビ「木曜劇場」で放送されていた同名ドラマのシナリオ(脚本)を書籍化したもので、脚本家である倉本の作品としては久しぶりの長編です。
舞台となる富良野で描かれる、確執の残る父と息子の関係性がゆったりと解きほぐされる様子は心が震えます。父と息子、それぞれに感情移入してしまえば自然と涙も零れるはず。
シナリオであるため、通常の小説とは違い、いわゆる「ト書き」で展開される本作ですが、とても読みやすく、ドラマを観ていた方であれば情景がありありと目に浮かぶことでしょう。
今回ご紹介した作品はほんの一部です。
舞台となる土地や、作家の出身地に着目して作品選びをすることで、その作品の背景に思いを馳せることができ、新しい発見をすることもできます。
ぜひ、ゆかりのある土地に注目し、それが題材や舞台になっている作品を探して味わってみてはいかがでしょうか。
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