2022.05.11
地元出身の作家を読む―生誕100周年・北海道旭川出身 三浦綾子
こんにちは。リージョナルキャリア北海道スタッフです。
小説を読もうと思ったとき、皆さんは何を基準に選ぶでしょうか。映画化されたもの。SNSで話題になっているもの。ミステリやファンタジーなど好きなジャンルのもの。はたまた、愛してやまない作家がいて、その作家の新作を追いかけ続けている方もいらっしゃるかもしれません。
リージョナルキャリア北海道はU・Iターン転職のお手伝いをしています。「Uターン=地元への回帰」ですが、今回は「地元」から着想し、「地元出身の作家」を切り口とした本選びをテーマにしてみました。
北海道出身の作家は数えきれないほどいますが、その中でも今年生誕100周年を迎えた「三浦綾子」について今回はご紹介いたします。
三浦綾子(みうらあやこ)について
三浦綾子(1922年~1999年)は北海道旭川市出身の作家です。作家としてデビューしたのは東京オリンピックが初めて開催された1964年。朝日新聞の懸賞小説へ応募し、入選を果たした『氷点』が大ベストセラーとなりました。映画化やテレビドラマ化もされている有名な作品なので、そちらでご存知の方も多いのではないでしょうか。
7年間教師として教鞭を振るっていた綾子は敗戦をきっかけに教壇を降り、肺結核を患ったことや婚約解消などを経験して生きる目的を長い間失ってしまいます。その後、別の病も併発し13年間に及ぶ長期間の闘病生活を送る中で、徐々に自分の人生観を見つめるに至ります。キリスト教への信仰を深めたのもこの頃でした。
夫の光世(みつよ)とは闘病中に出会い、夫の献身的な愛を受けながら奇跡的に病を回復させ、退院後に結婚。雑貨店で働く傍ら執筆した小説が『氷点』でした。生涯にわたり84作の著作を著した彼女は、1999年10月にその生涯を終えます。今年(2022年)は生誕100周年を迎える記念すべき年となっています。
三浦綾子の作品について
鮮烈なデビュー作であり、代表作ともいえる『氷点』は北海道旭川市が舞台となっています。
キリスト教でいう「原罪」をテーマに、人間の醜いとされる感情、いわゆる嫉妬や憎悪、復讐心などをリアルな筆致で描いた重みある作品です。家族からの徹底した排斥といった逆境に負けず立ち向かう陽子の姿には一筋の光を見出しますが、感情移入すればするほど、陽子が自身の原罪に気付いた時の凍り付くような感情が読み手にも押し寄せてくる心地を味わいます。表題へと見事に着地させる傑作です。
三浦綾子の作品作りにおいて特徴的なのは、口述筆記による執筆が行われていたことでしょう。声に出した物語を夫の光世が書き取り、そして推敲の際には、光世が声に出し、綾子がそれを聞いて直していたといいます。だからこそ綾子の作品を声に出して読むと言葉のリズムの心地よさに気づくことができます。
ぜひお読みになる際、一度は文章を音読し、声のやり取りで紡がれた作品の魅力を味わっていただきたいと思います。
三浦綾子記念文学館について
1998年に開館した民営の記念文学館です。コロナの影響もありしばらく臨時休館していたのですが、2022年4月1日(金)より開館しています!
三浦綾子記念文学館
〒070-8007 北海道旭川市神楽7条8丁目2-15
電話 0166-69-2626 FAX 0166-69-2611
三浦綾子記念館公式HP https://www.hyouten.com/
■「三浦綾子生誕100年記念特別企画展 プリズム─ひかりと愛といのちのかがやき─」
生誕100周年を記念し、特別企画展が開催されています。「作品を生み出した者として」「困難を生き抜いた者として」「一人の女、そして妻として」「キリストを信じた者として」「平和を実践した者として」という5つの切り口をテーマに三浦綾子という人物像を深堀しています。展示資料として、『氷点』の応募時原稿や、綾子の直筆原稿、光世へあてた手紙、当時の掲載しなど貴重な品々を観ることができます。
会期:2022年4月1日(金)〜2023年3月21日(火・祝)
会場:三浦綾子記念文学館 本館2階第4展示室および回廊展示
入館料:大人 700円 学生 300円 ※高校生以下は無料
北海道新聞にて「あたたかき日光(ひかげ)――光世日記より」連載中
三浦綾子生誕100周年と北海道新聞創刊80周年を記念した共同企画で、3月26日から毎週土曜日に北海道新聞で連載されています。執筆しているのは三浦綾子記念文学館の館長であり、北海学園大学教授の田中綾氏。三浦綾子の夫である光世が残した日記をもとに、一部のフィクションを交えながら二人の半生を描いた小説となっています。
ここまで、北海道出身の作家、三浦綾子について取り上げました。今回は文字数の都合上、一人の作家しか取り上げることができませんでしたが、「作家の出身地」あるいは「出身地が舞台となっている」といった土地の切り口で本を選んでみると新たな発見があるかもしれません。
なお余談ですが、現在、三浦綾子記念文学館の館長を務めている田中綾氏は筆者の北海学園大学時代の恩師でもあります。そんなご縁もあり、個人的に記念館の取り組みには今後も目を離せません。三浦綾子の作品が今後も一層愛され続けること、そして三浦綾子記念文学館がますます発展することを祈念しております。
三浦綾子記念文学館の公式HPは、随所にこだわりを感じることができ、これまで三浦綾子に触れたことのない方であっても気軽に彼女の紡ぐ文学に触れることができます。直接訪問することが難しい方もぜひ一度公式HPを覗いてみてください。
・「氷点カレッジ」
講演、朗読、インタビューなどを無料で視聴することができるオンライン番組です。年間40本以上のコンテンツ発信により、幅広い層へ作品に触れる機会を提供しています。
・「はじめの一歩」
三浦綾子作品の書き出し部分がHPで無料公開されています。冒頭部分を読んで気になった作品から気軽に手に取ることができます。
・登場人物セリフ集
作品に登場する人物の台詞を抜き出したコンテンツです。先述しました通り、三浦綾子の作品は口述筆記で記されていたことから、声に出すことで作品の味わいがより深まるものとなっています。掲載されているセリフを読み上げて、心に響いた作品に触れてみるのも面白いかもしれません。
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