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経営哲学、人生哲学を学び、フィロソフィを組織に浸透する。

株式会社はなまる
代表取締役 清水 鉄志

更新日:2015年12月10日

1952年12月4日生まれ(63歳)
根室市出身、根室高校卒業。東京で落語家修行、劇団活動などを経験した後根室に戻りスナックを始める。42歳(1994年)で回転寿司「花まる」(後に「株式会社はなまる」に商号変更)を開業、平成12年に札幌進出、平成25年には東京に出店を果たした。
※所属・役職等は取材時点のものとなります。

アルバイト集団からのスタート 。一生懸命考えることがすべて。

私の経歴をご覧いただくと、随分大胆な人間に見えるかもしれませんが、実は私は子供の頃からとても臆病で小心な人間でした。頭も良くありませんでしたし、物事の判断も曖昧だった。ですから、これまでの私の人生は「自分を変え続ける歴史だった」と言うこともできるかもしれません。まがりなりにもそれが実現できてきたのは、ただただ「一生懸命頑張った」ということ。そして、45歳の時(「花まる」を始めた直後の頃です)に出会った「稲盛和夫」氏の存在です。

根室と北見で少数のスタッフを抱えパブスナックを経営していましたが、自分が40歳を過ぎた頃、全国で「回転寿司」ブームが始まりました。根室はご存知のように漁業の街です。魚は豊富にありますが、それだけに「回転寿司」を何か軽く見る傾向があったのかもしれません。誰も始めようとしませんでした。

そんな中で、私には「回転寿司こそ、根室でやるべき仕事だ。誰もやらないなら、自分がやるしかない」というヒラメキがあったのです。スナックをたたみ、その従業員とともに「花まる」の看板を掲げることにしました。何のノウハウもありません。教科書もありません。道内の同業者に教えを請いましたが、彼ら自身も手探りだったように思います。「一生懸命考える」こと、「試行錯誤を繰り返す」ことで事業はスタートしました。

創業当初のスタッフは、アルバイト情報誌から採用した地域の主婦や高校生です。同業界から人材を引っ張ってくるようなことも、あえてしませんでした。これは今もそうで、寿司職人、回転寿司経験者の採用は多くありません。既成概念の無い自分の頭で1から考える、それが当社のスタイルとなっています。

大切なことはフィロソフィの共有 。「花咲学校」の果たす役割。

余談ですが、北海道のプロ野球チーム「北海道日本ハムファイターズ」は育成とスカウトを柱とした球団と言われ、FAでの選手獲得は行っていません。当社もまた、育成によってスタッフの定着を図り、店長の育成を行っています。

ホールや握りのスタッフとしてスタートした人材が、やがて店のリーダーとなり、本部スタッフとしての才能を開花させることになります。彼らの多くは新卒入社組、そしてSE、ホテルマン、営業職、塾講師、とび職など、まったくの畑違いからの転職組に占められています。

「意図した」と言うこともできますし、そうせざるを得ない労働市場でもありました。新卒はもちろん、中途入社の多くが「寿司」「握り」未経験からのスタートでした。

もちろん、過去の経験を生かして最初から事業にインパクトを与えてくれた人材も数人います。職人上がりながら組織に馴染み、店長や商品開発で頭角を現している人材がいます。

後で聞くと、最初はほんの腰かけのつもりだったようですが、後でお話します当社の「フィロソフィ」に共感することで、自分の役割を見極めるようになったというのです。

新卒で採用した人材の中にも、そろそろ経営幹部として期待したい人材が育ってきました。店長となり、私に代わって「フィロソフィ」を語ってくれています。

これまでの当社の経営は「私中心」でした。新しい店を開く時は、社長がそこに席を移して、制服を着て店内をめぐり、時に接客をする。朝礼、夕礼で繰り返しスタッフに考えを語る。初めのころは自分で寿司を握っていたこともあります。直接叱り、直接励ますことで人の成長を図っていました。

しかし、それだけではいずれ続かなくなることも十分わかっていましたし、人材育成の重要さも理解していたつもりです。そんな時、ある大きな団体職員からの転職で中途入社した、経験豊富なスタッフのヒントをもとに始まったのが「花咲学校」です。

師と仰ぐ稲盛和夫氏との出会い、それが経営の核となっています。

「花咲学校」は新規入社社員の育成機関です。札幌本部に擬似店舗を併設し、重要なポイントを集中して学び、効果的に技術を習得できるようにしたもので、約1年間ここで学びながら実務にあたってもらっています。

階層別の研修や社外研修の実施、パートやアルバイトが集まっての研修も定期的に実施しています。勉強会というよりも、輪になっての話し合いが基本スタイル。もっと良い店にするために、一人ひとりにとって価値ある職場であるように、みんなで話し合い、学びます。

私は、握りや接客の技術も、仕入れの目利きも大切だと思っていますが、それよりもっと大切なのは、そういう知識・技術を受け入れられるだけの心の向き方、そして経営者や職場の仲間たちとの共感ではないかと考えています。ここまでで何度かお伝えした、「フィロソフィ」の共有です。

今でも、私自身が彼らの輪の中に入り、直接語りかけることが多々あります。社内ネットを通して発信している「ほうれんそうメール」で考えを伝えることもあります。ある日の「ほうれんそうメール」では、「部下の心を、信頼を一身に集めること」というテーマで店長へのメッセージを発信しました。

フィロソフィ研修やマネジメント研修、パートアルバイト研修は、グループでのディスカッションが中心となり、講師や同僚の話を聞き、自分の意見を言う訓練を中心に行っています。

人材育成や経営に対するこのような考え方は、「盛和塾」で学んだことが基盤となっています。「盛和塾」は、師と仰いでいる稲盛和夫氏が主宰する経営塾で、私が45歳の時に出会いました。札幌支部でも、分科会や塾長例会などが行われており、現在、私が代表世話人の一人として運営しています。そこで「人としての生き方」や「経営哲学」を学んでいるのです。

そこで得たものを自分たちの組織に下ろし、根付かせること。それが当社の経営の根幹となっています。そのフィロソフィに共感し、一緒に考えてくれるスタッフが、経営幹部として成長しているのです。

新たな成長の段階へ。人材育成がその成功の鍵を握る。

おかげさまで「花まる」は多くのお客さまのご支持をいただき、順調に発展してきました。2013年に東京進出も果たし、さらに多くの引き合いもいただいています。

今、私の頭の中には回転寿司の仕組みを生かした、もう少し軽い外食の新業態イメージがあります。リーダークラスを集めたディスカッションの場で、その構想を話すこともあります。

今はまだ、私が発信し彼らがそれを理解するという、当社の基本的なあり方は変わっていません。しかし、さらに多くの地域に展開し、お店が増え、業態が増えていくとき、経営者だけで舵取りができるものでないことも理解しています。

大切なことは、代行者としてしっかり機能できる人材を育てること、新鮮な発想で会社にインパクトを与えてくれるような人を生かす仕組みを作ることでしょう。

マニュアル化もひとつの取り組みです。単に形を細かく規定したようなマニュアルではありません。なぜそうなのかがよく伝わるような、そして、一人ひとりが考える余地を十分に残したマニュアルです。


私たちは、外食を通して「情緒」という人間味を育む場を提供したいと思っています。情緒性が人のこころの一端を形づくるとすれば、その後の人生にさえ関わることになります。そんな職業がそれほど多くあるわけではなく、なんともかけがえのない仕事です。

この仕事のかけがえのなさを、一人でも多くのスタッフに伝え、素晴らしい職業人として成長し、喜ばせること。それが経営者としての私の使命だと考えています。

編集後記

コンサルタント
高岡 幸生

フィロソフィ(経営哲学)を「共有する」のは言葉でいうほど簡単なことではありません。私はいかに優秀な人材を採用しても、思い(フィロソフィ)が経営者と一致しないうちは、採用が「未だ意味を成していない状態=本質的に活躍できてない状態」だと思っています。

ですから、「採用が経営を変える瞬間」とは、入社者が社長の思い(フィロソフィ)を実践しようと心に決めた瞬間だと思います。

その意味において、清水社長は極めて本質的な組織作りをしている経営者だと思います。この組織作りと事業成長の速度を、どこまで高められるかに私は注目しています。今後も採用を応援させていただきながら、学ばせていただきたいと思っています。

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