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医療・産業・エネルギー・農業分野で北海道を支え、共創型事業で未来を拓く。

エア・ウォーター北海道株式会社
代表取締役社長 庫元 達也

更新日:2025年8月20日

高校卒業後、ガス関連企業で人事・経理を経験。1993年に北海道ほくさん販売(現:エア・ウォーター北海道)へ入社し、経理・営業・企画業務に従事。その後、営業部門長、事業企画部長を歴任し、2023年に全179市町村への寄付制度を創設。地域と企業が共創する事業モデルを構築。2024年、代表取締役社長に就任。北海道から地方エリアの社会課題解決型ビジネスに挑む。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

入社の原点と、地域と共に歩む視点。

私は元々、教員を目指していました。受験に失敗し、現実的に自ら生計をたてようと決意して18歳でガス関連企業へ就職。最初は人事や財務経理といったバックオフィス業務を担当していましたが、さらなる成長に挑むべく転職し、北海道ほくさん販売(現:エア・ウォーター北海道)に出合いました。

地元紙の求人広告をきっかけに応募し、入社後は事務職から営業、経営企画とキャリアを積みました。当時は営業といっても仕事内容はいわゆる「なんでも屋」。日々作業服と工具を引っさげて、客先の配管工事から保安点検、機器交換、集金まで担当エリアを一人で担う業務でした。

札幌市内といっても、都市ガスエリアとプロパンガスを使用しているエリアは、およそ50:50で、積雪地域での仕事内容は決して楽ではありませんでした。それでも、地域のお客さまからは、社名から「“ほくさん”さん」と親しまれ、暮らしを支える手応えと、感謝の言葉に励まされる日々の繰り返しでした。

この時の経験が、今の経営現場でも「地域と共に成長し続ける会社でありたい」と考える原点になりました。地域の産業や生活者、時代の変化によって変わりゆく暮らし方に向き合った時間こそが、私の意思決定の軸となっています。

4つの領域で圧倒的シェア、それでも挑戦を続ける。

エア・ウォーター北海道は現在、産業・医療・エネルギー・農業食品の4領域において、道内トップクラスのシェアを誇っています。

さまざまな産業工場へのガスインフラ供給、医療用ガスの供給、生活エネルギーで暮らしを支え、また栽培から加工・流通・販売とワンストップで行っている農業食品事業。いずれも地域の産業から人々の暮らしに結びついたエッセンシャル企業です。

しかし、私たちはその現状に進化と変化を止めません。北海道は少子高齢化・人口減少といった社会構造変化が全国に先駆けて進んでおり、従来型のビジネスは縮小していくことが避けられません。

今後の持続的な成長のためには、既存事業の効率化を目指すだけではなく、「新しい事業領域の創造」が不可欠だと考えます。

こうした中、私たちエア・ウォーターグループは、2030年度に目指す姿として「terrAWell30」を定め、成長性と収益性を事業ポートフォリオ戦略へ落とし込み、再生エネルギーやアグリソリューションといった北海道のポテンシャルが期待される分野の新領域へ、地域課題と一緒に考えていきます。

社会インフラ企業としての知見と技術力をベースに「未来をつくる」企業へと進化しようとしています。

「エア・ウォーターの森」が拓く共創の未来。

その象徴的な取り組みが、2024年に開設したオープンイノベーション拠点「エア・ウォーターの森」です。この施設は、大学研究機関・スタートアップベンチャー・自治体・パートナー企業・地域が交わり、共に課題を見つけて解決に向けて動く「社会課題解決の実装場所」です。

プロジェクトのきっかけは、札幌市中央区北3西1にあった旧本社ビルの耐震強度問題からの再開発でした。建物をあらためて単なるオフィスビルにするのではなく、地域や未来に貢献する空間にしようという構想のもと、北海道大学・室蘭工業大学・国立三大学機構との連携、異業種分野との事業創造に取り組める場として設計しました。

現在では、稼働日の半分以上が各種イベント、共創セミナーなどに活用されています。シェアオフィスやレストラン、時には学生に向けた自習室といった使われ方もあり、地域住民との接点も広がっています。この「開かれた施設」が、事業と地域、そして人材をつなぐハブとなっているのです。

地域の声から事業を生む、寄付制度と実証プロジェクト。

もうひとつの象徴的な取り組みが、北海道全179市町村への寄付制度です。単なるCSRではなく、地域との対話のきっかけと位置付けたこの制度は、すでに複数の実証プロジェクトを生み出しています。

たとえば、東神楽町では道内初のサーモンの陸上養殖テストプラントを立ち上げました。ここには、エア・ウォーターグループのリソースである、酸素供給や人工海水利用、プラント設計施工といった技術を活かしています。

三笠市では水素を活用した次世代エネルギーの実証、大樹町ではバイオメタン生成技術を活用した宇宙産業のビジネス拡大が進んでいます。

共通しているのは、「地域に寄り添い、課題と向き合い、事業としての形を目指す」というスタンスです。行政・大学・企業が連携し、地域発のビジネスモデルを全国へ展開できる未来も見据えています。

北海道発モデルを全国へ、地方からの可能性。

私たちが北海道で展開してきた取り組みは、単に「地域に根ざす」だけにとどまりません。厳しい自然環境や人口動態変化と向き合いながら確立してきたノウハウは、全国の地域にも応用可能で「社会課題解決モデル」として高い価値を持っていると考えます。

たとえば、寄付制度を通じた連携型事業には、農業・林業・漁業といった一次産業の今後の在り方や、脱炭素・新エネルギーといった環境に関わる解決法などは、全国のどの自治体にも横展開できる事業創造です。

私たちは今後、北海道で培った実装力をさらに大きなものに変えていくべく、それぞれのパートナーと展開していく構想を描いています。

また、エア・ウォーター北海道はグループ全体の経営資源やブランドを活かしつつ、地域密着で得た視点と実行力で独自の貢献を果たしてきました。地元に関わってきた経験があるからこそ、経営判断や事業開発において「北海道の実情」を的確に捉えられているのだと思います。

北海道発のアイデアでグループに新たな価値を提供していく。その循環こそが、これからも私たちの発想力と競争力の源になると信じています。

求めるのは、「事業をつくる人」。

こうした未来志向の事業を支えていくうえで、私たちが今最も必要としているのは、「事業をつくれる人材」です。

コーポレートスローガンにも掲げていますが、「創業者精神を持って、空気・水・そして地球にかかわる事業の創造と発展に、英知を結集する」、常に開拓者精神で自らが考え、動き、周りを巻き込める活力がある人。そんな仲間とともに、次の時代のエア・ウォーター北海道をつくっていきたいです。

特に理系・技術系の素養を持った方には、活躍できるフィールドが数多くあります。現在進行形で、研究開発機能部門を想像していますが、先にお話ししたように実証・実装型の取組みは、北海道において数多く進んでいます。

だからこそ、「技術を社会実装する力」を持った人材がここに必要なのです。若手の抜擢や社内ベンチャー的な取り組みも積極的に進めています。

自らの手で社会課題を解決したい。北海道というフィールドで、先進的なチャレンジを仕掛けたい。そう思う方にとって、私たちが全力で応える土壌を整えていきたいと考えています。

編集後記

コンサルタント
小野 可蓮

エア・ウォーター北海道は長い歴史を持ちながらも、常に挑戦を続ける姿勢を貫かれており、お話を聞くたびに未来への大きな希望を感じます。

既存の事業に安住することなく、地域社会の課題解決に向けた取り組みを進めるのは、決して容易な道ではないでしょう。それにもかかわらず、あえて困難な道を選び、果敢に挑戦を続ける同社の姿勢に深く感銘を受けています。

これまで培われてきた信頼と実績を礎に今後も新たな挑戦を続ける同社の歩みを、微力ながらも支援していきます。

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