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単なる「物貸し」ではなく、多彩な提案で顧客課題を解決する総合レンタル企業。

片桐企業グループ
カタギリ・コーポレーション株式会社 代表取締役社長 片桐 大

更新日:2023年11月01日

1978年生まれ。2001年に北海道の大学を卒業後、小松製作所に入社し営業を担当。業務を通じ、ITを活用した建機管理システムについて深く知り、業界のリーディングカンパニーは様々なことに挑戦しているのだと実感する。2003年、片桐機械に入社。2010年、副社長に就任の後、2013年、同社の代表取締役社長に就任。既存事業を基盤としつつ、顧客ニーズに合わせて取扱商品を増やし、サービスを拡充することで、グループ全体の事業を着実に成長させている。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

あらゆるニーズにワンストップで対応。

カタギリ・コーポレーションを中核とする片桐グループの創業は1935年。当初は工作用機械などの中古販売を行っていました。北海道初となる建設機械のレンタルを開始したのは、1963年です。

その後、1972年に日建リース工業株式会社との共同出資で、日建片桐リース株式会社を設立。1980年、株式会社レンタコムとの提携で、レンタリース片桐株式会社(現:レンタコム北海道)を設立。1990年には、日本オフィス・システム株式会社との提携により、北海道オフィス・システム株式会社を設立しました。

業界大手の企業と力を合わせたことで、レンタル製品のラインアップはどんどん充実。現在では、建設機械・安全機器のレンタル販売を始め、建設用仮設資材や物流機器、介護用品、オフィス設備やIT機器、イベント用品、さらにはITシステムの構築や運用保守など、グループでさまざまなニーズに応えられる「総合レンタル」業に発展しています。

これだけ多岐にわたるレンタルに対応できる会社は、日本全体でもあまりないのではないでしょうか。お客さまから「物を貸してほしい」と言われて提供するだけのレンタルサービスでは、付加価値がありません。

例えば、お客さまから「高所作業車を借りたい」と言われた時、お客さまの目的は高所作業車そのものではなく、自社の工事を安全かつ効率的に進めることにあります。そこで、お客さまの状況をお聞きし、「それなら、仮設の足場材を使って作業空間を作る手法もあります。コストや工事の運用面からもメリットがあります」と提案すれば、お客さまにとっては無駄なコストを省きつつ、質の高い工事が実践できるようになります。

片桐グループが単品のレンタルだけに特化した会社なら、こうした提案はできません。あらゆるニーズにワンストップで応えられる総合レンタルを行っているからこそ、付加価値の高い提案ができるわけです。これは、当グループの大きな強みです。

提案の積み重ねで、事業領域を拡大。

合計10社で総合レンタルと関連事業を展開する片桐グループですが、業績的に大きなボリュームを占めるのは、創業分野でもある建設機械のレンタルです。

これは、多くの建設会社が建設機械を自社保有していない、という事情にもよるでしょう。建設工事は、その種類によって必要となる設備が異なります。河川工事と橋梁工事、道路工事では、稼働する機械が変わってくるのです。

すべての工事に対応するための建設機械・資材を自社在庫として抱えるのは、建設会社にとって大きな負担です。そこで、当グループのような、さまざまな建設機械・資材をワンストップで揃えられるレンタル会社が頼られる、というわけです。

グループの事業を牽引するのは建設分野ですが、私は各分野に数値目標を掲げ、その必達を促すような経営手法はとっていません。お客さまからの依頼に対し、どういった解決策があるかを考え、提案する。その積み重ねにより、事業の領域を少しずつ横に広げていければいい、といつも従業員には話しています。

大切なのは、売上目標の達成ではなく、お客さまの相談に応え、お客さまのメリットにつながる解決策を提示することです。その結果、事業領域を広げていければ、着実に成長できるのではないでしょうか。

お客さまから「こんなことはできないか」と相談を持ち込まれることも増えてきました。「建設用のこういうアタッチメントが調達できないか」と相談を受け、それを調達したことで提案の幅が広がり、ラインナップが拡充した、というケースもあります。

また、地域によって必要な物の顔ぶれが異なるため、片桐グループでは店舗ごとにアイテムのラインナップを変えるなど、独自性も持たせています。

今後を見据え、DXやICTにも注力。

建設以外では、イベント関連の分野で特に存在感を発揮しています。北海道で開催される一定規模以上のイベントには、たいてい当グループが絡んでいます。プロゴルフツアーなどの7~8割は、当社がレンタル品を提供しています。建設資材から仮設スタンド、発電機、仮設トイレまで手配できるため、イベント時に重宝されるのです。

レンタル業は「整備業」の側面も持っています。どのような機械や資材でも、戻ってきた後はメンテナンスを施し、汚れをきれいに落とさないと次のオーダーに対応できません。この整備力を利用した事業拡大も検討中です。お客さまが何か製品を買った際、メンテナンスはいずれ必要となりますから。これにより、当グループの提案の幅はさらに広がるでしょう。

昨今、DX・ICT分野にも力を入れています。建設分野では今後、ICTの導入が盛んに進められるはずです。というのも、「建設機械のオペレータが減少している」からです。熟練のオペレータを短期間で養成するのは困難です。キャリアの浅いオペレータでも一定以上の機械操作が行えるようになるには、ICTによる支援が欠かせません。

デコボコな土地の表面をブルドーザで整地するのにGPS情報を活用する、といったことはすでに実施されています。それらの技術を率先して習得し、お客さまに提供したいと考えています。

いずれ、建設機械も無人操作の時代になるでしょう。その時のためにも、今からDXやICTに注力しておく必要があるのです。

売上ではなく、プロセスを評価。

お客さまの相談を聞き、解決策を提案する。その積み重ねにより、事業領域を横展開で拡大させる。従業員がそうした動きをできるようにするための環境づくりにも取り組んでいます。

営業日報を全従業員で共有し、見たい人はいつでもアクセスできるようにしたのは、その方策の一つ。これにより、札幌で行った良い提案を、釧路で見ることも可能になっています。そうやって個々の動きを蓄積していけば、スタッフにとって心強い知見となる、と期待しています。

営業スタッフを評価する際も、「どんな活動をしているか」という点を見るようにしています。当グループでは、個々の営業に売上目標を課すことはありません。それよりも、お客さまとどんな話をしてきたかを基準に評価しているのです。数字ではなく活動そのものに注目することで、お客さまへの新たな提案を促そうというわけです。

当グループは、2019年、e-スポーツを軸としたイベント運営を行う株式会社e-REVOを設立しました。この事業のきっかけとなったのは、従業員からの「やりたい」という提案です。

イベント関連用品を貸し出すだけでなく、「自分たちが能動的にイベントを開催できる側になりたい」という思いが発端となって、事業がスタートしたのです。環境が整えば、従業員は自発的に動き出せる。私はそう考えています。

顧客課題の解決のため、新たな発想でチャレンジしてほしい。

片桐グループで重視するのは、お客さまに共感し、その思いに応えようとする姿勢を持っているかどうか、です。建設機械や各種資材についての知識は、入社してからでも身に着けられます。

それより、お客さまの課題の本質をしっかり捉え、課題を克服できる策を提示することに力を注いでほしいのです。課題解決のため新しいやり方にどんどんチャレンジする人は、お客さまからの信頼が集まるでしょう。

女性の活躍にも期待しています。今は、お客さまである建設会社にも、女性の姿が増えてきました。そこで、設備にも女性の声を反映してほしい、という声が大きくなっているのです。

代表例は、仮設トイレでしょう。美観面や衛生面で配慮の欠ける工事現場の仮設トイレに、現場の女性は強い不満を持っています。仮設であっても化粧ルームが欲しいし、そもそも男性従業員と共用のトイレは避けたい、と感じているのです。そうした女性の思いに共感できる人材が不可欠です。

他にも、「工事現場にキャラクターものを取り入れたい」といった意見も出てきています。私たちは、そういった変化をしっかりキャッチアップしていかないといけません。お客さまの思いに応え、新たな取り組みを積極的に取り入れることで、事業を進化させる。そうやって当グループは、着実に前進していきます。

編集後記

コンサルタント
佐々木 はつみ

片桐社長のインタビューで印象深かったのは、お客さまの相談に対して、お客さまのメリットになる解決策の提示を徹底してきたという点です。その結果、付加価値の高い提案ができるという強みに繋がり、片桐グループは日本でも数少ない、さまざまなニーズに応えられる「総合レンタル」業へ発展しました。

また、建設分野のみならず、北海道で開催される一定規模以上のイベントの多くに同グループが携わっていると伺い、その展開領域の幅広さに驚かされました。お客さまの思いに応え、新たな取り組みを積極的に提案したい方なら、常に成長を感じながら長く活躍できる環境だと思います。

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