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電子カルテをベースに人々と医療をつなぎ、社会課題の解決に寄与する。

株式会社CEホールディングス
代表取締役社長 齋藤 直和

更新日:2023年11月29日

1963年生まれ。小学校時代をオーストラリアで過ごす。1987年に早稲田大学を卒業後、NECに入社。医療分野におけるシステムや画像電子化などの提案を行う。北海道エリアの担当だった頃、株式会社シーエスアイ創設メンバーと知り合いになる。2017年、当時の社長からの招聘を受け、株式会社シーエスアイに転職し、社長に就任。2019年には株式会社CEホールディングスの社長となり、グループ全体の舵取りを行う。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

電子カルテシステムで、国内10%超のシェア。

CEホールディングスグループは、持株会社である株式会社CEホールディングスを中心に、医療システム開発などを行う株式会社シーエスアイほか、合計7社の連結子会社で構成されています。

グループの事業を牽引する力となっているのが、シーエスアイが提供する電子カルテシステム『MI・RA・Is』です。これは全国900の医療機関・関連施設に導入されており、国内で10%超のシェアを占めます(参照:医療機器システム白書2021データ)。

MI・RA・Isを始め、医療画像解析サービスや医薬品開発の治験受託を展開する株式会社マイクロン、医療とWebの知見を活用した産業保健事業や人材事業を行なう株式会社Mocosuku、看護業務システムをサポートする株式会社エムシーエスなど、医療における様々なシステムやサービスを提供しています。加えて、一般企業のデジタルマーケティングを支援する株式会社サンカクカンパニーなどもあり、事業は多彩に広がっています。

私は前職でNECに在籍し、医療領域を担当。北海道に赴任していた時はシーエスアイ創設メンバーと接点がありました。その縁で、シーエスアイの前社長から招聘を受けたのです。NECの役職定年を迎えるにあたり、電子カルテの今後に関わっていきたいと考えていました。

200~300床の中規模施設を主な顧客とするシーエスアイでなら、機動的かつ挑戦的な提案を実行できるかもしれない。そんな期待もあり、2017年に同社の社長に就任しました。その後、2021年にはCEホールディングスの社長に就任し、グループ全体の運営に携わるようになりました。

電子カルテの“次”を見据え、新たなイノベーションを。

シーエスアイの社長時代に手掛けたのが、電子カルテを中心とする事業構造の整理です。特にサポートのあり方を見直しました。お客様が疑問を抱かれた時や何か不具合が発生した時、すぐに行って解消にあたるのは大切です。

しかし、より重要なのは、そもそもお客様が疑問を感じないようなシステムづくりを行うことです。疑問があるからと業者に連絡して待ち時間を作るより、お客様が自己解決できるように配慮を行き届かせた方が断然いいでしょう。

たとえ不具合があっても、ネットワーク経由で情報を収集できるようにしておけば、現地に行かなくとも解決できるかもしれません。それらの観点から、事業を整理したのが一つ目です。

クラウド対応にも取り組みました。病院のシステムは、いまだに院内完結型の所が大半です。しかし、今やセキュリティ面でもメンテナンス面でも、もちろん使い勝手もクラウドが主流になっています。中小規模の施設が使いやすいよう機能を絞って低価格化するなどして、クラウドへの移行を促しました。

もう一つ、力を入れたのが「電子カルテシステムの次」を作ることです。患者さんの診療経過やバイタル、検査結果や画像、看護記録、医事会計に至るまでを一括管理・処理する電子カルテシステムがリリースされたのは15年くらい前。しかし、電子カルテ本体はあまりイノベーションが起こっていません。

むしろイノベーションは病院の外で起こっており、地域の介護士や在宅医療で活躍する看護師が病院と協力し、情報共有する仕組みなどが生まれています。

私たちも、電子カルテを外とつなぐことに可能性を感じました。2019年、臨床開発支援を行う株式会社マイクロンをM&Aでグループの一員として迎えたのには、そうした背景があります。電子カルテシステムの会社と臨床開発支援の会社が同一グループ内に共存する例はありません。

製薬会社と電子カルテシステムをつなぐ接点を作り出せば、病院と製薬会社の双方にメリットをもたらし、医療の質がさらに向上するでしょう。今は私の立場が変わったものの、こうした取り組みは今後も継続し、発展させていくつもりです。

ヘルスケア領域で「つながる社会」を実現。

当グループは現在、2030年をゴールと設定し、2025年に中間の節目を迎える「中期経営計画2025」を遂行しています。ここで私たちは、コア・コンピタンスであるヘルスケア領域のソリューションを通じ、「つながる社会」を実現する、というビジョンを掲げています。各所に分散する健康・医療データをつなぎ、誰もが活用できるようにして健康に寄与しよう、というわけです。

そのフェーズ1にあたるのが、医療機関同士のつながりです。これは前述の内容と関連するもので、クラウド上に蓄積された電子カルテデータが、強固なセキュリティを担保しつつ、異なる医療機関同士で共有される状況を想定しています。

フェーズ2の軸となるのがスマートフォンです。この段階では、医療機関同士で共有された電子カルテデータと患者さんの健康データがつながって統合されます。そして、統合されたヘルスケアデータを患者さん自身がスマートフォンで管理できるようにするのです。

自分がいつ病院に行き、どんな症状を訴えたか。その時処方してもらった薬のどれが効いたか。これらを記録したデータと、日々の体調に関するデータが連携していれば、患者さんは自分の症状を正しく医師に伝えられるようになるでしょう。

このシステムは、医療現場の多忙さを軽減するのにも効果を発揮すると考えています。さらに重要なのは「本当は救えたのに、救えなかった」という無念さをなくせるのではないか、ということです。例えば、緊急の手術を行う際でも日常的な健康状態や服薬の情報が十分に共有されていれば、処置がより適切になるはずです。

仮にうまくいかなかったとしても、現場のデータをきちんと蓄積しておけば、いつか必ず役立ちます。こうした仕組みが現在、医療現場で十分に整っているとは言えません。だからこそ、取り組む意義があるのです。

医療機関と手を組み、新たなモデルを構築。

カルテと統合されたヘルスケアデータを個人が管理・活用できるようになると、様々な社会課題の解決も図っていけるでしょう。医療との結びつきはもちろん、製薬業界とつながれば新薬開発に役立ちますし、介護施設とつながることで施設利用者の健康管理を効率的に行なえます。さらに自治体と連携した住民サービスの向上にも貢献するはず。これが私たちの思い描くフェーズ3の段階です。

今後は、私たちの考えに理解を示していただける医師・医療機関と手を組み、データ活用を基盤としたヘルスケアの新しいモデルをつくっていきます。データは収集し、保有しているだけでは意味がありません。必要な情報を分析・整理する仕組みや、構造化も必要です。そういった仕組みの構築に、着実に取り組んでいきたいと思います。

医療とはもともと、情報科学です。血液の値の測定方法は全世界で同じですし、得られた情報を診断・治療にどう役立てるか、といったことも確立されている。ICTと馴染みやすいはずです。しかし、実態はそうなっていない部分が多々あります。そこに、私たちの活躍する余地もあると考えています。

「人々の健康に貢献したい」というマインドを重視。

「電子カルテシステムをベースとしてヘルスケア領域を向上させたい」という当グループの理念に賛同し、中途で来てくれる人材も徐々に増えています。医療分野の出身者も珍しくなく、前職は看護師だった、理学療法士をやっていたという人も来てくれるようになりました。

当グループはIT分野に属する会社ですが、プログラム自体を作るスキルはノーコード・ローコード技術が出てきた情勢もあり、必須ではなくなっています。それよりも、社会の役に立ちたい、人々の健康に貢献したいというマインドを持つ人の方が、意欲を持って働けるのではないでしょうか。

病院に対し営業活動を行うという意味では、競合も存在します。その中で、どう差別化を図っていくかと考える人材も、当然必要です。そうした人材と、社会の役に立ちたいという人材のコラボが、事業の成長には欠かせません。

少し観点の違う話ですが、当グループには、デジタルマーケティングの実行支援を行う株式会社サンカクカンパニーという会社もあります。医療分野を事業フィールドとする子会社が多い中、一般企業が対象のサンカクカンパニーは、異質な存在です。しかしこの異質な存在が、当グループに多様性を与えてくれています。

長期的視野に立って事業を推進するには、同じような考えをする人間だけで進路を決めるのは危険です。多様な視点がないと発想は硬直化してしまいます。特に、非連続的なイノベーションは異質な考えが接触し合う環境からこそ生まれるものです。これは人材採用においても、同じことが言えるでしょう。多彩な視点・発想を持った人々にお会いしたいと思います。

編集後記

チーフコンサルタント
福澤 謙二郎

今回のインタビューを通じて、齋藤社長の『医療こそITの力が必要』という強い思いを感じました。その背景には、多忙を極める医療現場に対して何ができるか、そして目前に迫る超高齢化社会に対して何ができるか――というご自身への不断の問いかけがあるのではと感じました。

ITの力による患者の利便性向上、そして医療従事者の負担軽減を通じて、『救えたのに救えなかった』をなくしたい、そのために電子カルテで次のイノベーションを起こす。その志の実現に向けて、私もさらに応援させていただきます。

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