小樽の建設分野における実績を基盤に、大型木造建築に挑戦。
西條産業株式会社
代表取締役副社長 西條 公敏
1984年、小樽生まれ。東京での大学在学中、音楽活動を精力的に行いプロを目指すものの卒業後、不動産ディベロッパーの会社に就職。25歳から仕事と並行しながら再度音楽活動を再開し、レストランでのライブやラジオを舞台に主に活動。2015年、地元にUターンし、西條産業に入社。2019年、小樽商大大学院に入学し、MBA取得。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
資材卸・プレハブ・住宅建築と、建設分野における3本の柱がある。
西條産業は、1950年に木材販売を行う会社として出発しました。1963年、北海道の自然環境を考慮し、高断熱化を実現した寒冷地仕様のプレハブ建築「北海道ハウス」の製造販売を開始。1991年には、これを小型化し、仮設の事務所や屋台、休憩所、トイレなどに活用できる「シグマハウス」を開発しました。これらは、現在に至るまで、当社を支える息の長い事業となっています。
創業から約15年を経た頃、ゼネコンの依頼でプレハブ建築に携わるようになりました。ゼネコンがトンネルやダム、高速道路や風力発電といったインフラ工事を行う際、作業スタッフのための宿泊施設を設置しなければなりません。地方での工事となると、交通が不便でホテルなども少ないため、寝泊まりする場所がないとスタッフが確保できないからです。そこで、一時的な現場事務所兼宿泊施設のプレハブを自分たちで作ろう、となったのです。
プレハブ建築をきっかけに、建設分野にも進出。公共施設・社屋・工場など、非住宅建築の実績を積み上げていきました。一般注文住宅「JOYハウス」を提供するようになったのは、1985年です。これも、きっかけはハウスメーカーからの依頼でした。
小樽で当社がそのハウスメーカーの住宅を取り扱うことになった後に、自社ブランドとしてJOYハウスを立ち上げたのです。当社にとって初の一般消費者向け事業であり、地域の人々に西條産業を知ってもらう貴重な機会だったと思っています。
創業時のドメインである建設資材の卸事業と、プレハブをはじめとする非住宅の一般建築事業、そして注文住宅のJOYハウス事業。いずれも建設業界のカテゴリーではありますが、内容の異なる3つの柱が当社にはあります。どれか一つ、時流によって停滞することがあっても、別の事業で停滞分をカバーし合えることが特徴です。
また、当社は商社・卸部門を持つ建築会社のため、木材をプレカットする工場やパネル工場など、建設に関わるさまざまな会社とのネットワークを築いています。
道産材でも輸入材でも、さまざまな部材の調達が可能ですし、自分たちで建てることもできれば、協力工場をつないで供給体制を整えることもできます。建設をさまざまなやり方でオーガナイズできるのが、当社の強みの一つといえます。
非住宅の大型木造建築に注力し、カーボンニュートラル実現に寄与。
SDGsが重視される昨今、カーボンニュートラル達成のために注目を集めているのが木構造建築です。木材卸ネットワークがあり、建築分野にも明るいという特徴を持つ当社には、木構造建築に興味のある企業から徐々に相談が持ち込まれるようになりました。
材料手配から施工まで、木造建築部分を当社が一括して受け持つ、という事例も増えており、公共建築物や社屋、または高層ホテルなど、さまざまなタイプの大型木造建築物が誕生しています。こうした情勢を受け、昨年新たに木構造事業室を開設しました。
大型木造建築では、CLT(直交集成板)部材を使うこともありますが、荘厳な佇まいは圧巻ですね。比較的新しく、かつ難しい分野でもありますから、みんなで知恵を出し合いながら進めている、という具合です。
豚舎や牛舎などの農業系建築物にもよく使われています。木造建築は燃えやすい、腐りやすいと思われがちですが、今は技術が発達し、逆に燃えたり、腐ったりしにくくなっています。今後は、これにとどまらず、一般商業施設などでも木造が登場するようになると思われます。
木は、若い木の方が多くのCO2を吸収します。つまり、森林はほどよく新陳代謝を図ることで、高いCO2削減効果を維持できるのです。十分に育った木は伐採し、若木が伸びていけるようにする。その若木が大きくなったら再び伐採して、次世代に引き継ぐ。こういったサイクルをきちんと回すことが、木材の有効活用につながります。
また、木材の自給自足という観点もあります。コストが安い輸入材ばかりに依存していては、ウッドショックのように、世界情勢が混乱した際に木材が調達できなくなるリスクを抱えることになります。これを軽減するには、道産材を育てることが肝要です。
今年から、当社は適正に管理された森林から切り出された木材を使用し、持続可能な森林の利活用・保護を図る「森林認証」を取得しました。木材建築だけでなく、木材全体の動向に目を配り、その活用のあり方を業界全体で考えたいと思います。
小樽になくてはならない「100年企業」となるため、さらなる変革を。
私が社員によく言うのは、「100年に向けてどう動くか」ということです。順調に行けば、今から約30年後、私が65歳の頃、当社は100周年に到達します。西條産業の価値を高め、小樽になくてはならない、地域の人々に「西條産業があってよかった」と言ってもらえる存在でありたい、と常に意識しています。
そのためには、従来の延長線上では足りないでしょう。小樽の状況、市場の動向をにらみながら、社会や地域の困りごとを解決できるよう、柔軟に変化していかなければなりません。
私は、東京からUターンして西條産業に入った後、自らの力不足を感じ、MBA資格の取得に挑戦しようと大学院に進学しました。並行して、若手経営者の集う北海道経営未来塾に通い、同年代の人々と刺激し合いながら研鑽に励みました。
そして、過去の実績に依存するのではなく、それらを掛け算することで、新たな動きにつなげようと考えたのです。大型木造建築への取り組みはその一つです。
小樽には、豊かな自然をはじめとする多くの資源があります。それらを活用すれば、他地域にはできないことができる。私はそう信じています。
本業の事業ではありませんが、私が実行委員長を務めている冬の花火大会「小樽雪花火」を開催したのも、他ならぬ小樽ならではの価値あるものを掛け算して新たな価値を創造したい、という思いが原動力でした。
会社も同じだと思います。自社が持っている資源を改めて見つめ直し、時代に合わせて組み合わせたり、変化させて、地域の人々が望む新たな事業・サービスを生み出したいと思います。
100周年という目標は、そうした努力の積み重ねがあって達成できるのではないでしょうか。
中途転職者の持つ新たな発想・視点が、当社の発展に不可欠。
当社では中途転職者も大勢活躍しています。社外の環境を知る中途転職者は、西條産業に新たな風を吹き込んでくれる存在です。
もちろん、プロパー社員の方々も大事な存在であることは言うまでもないですが、それでも中途転職者の持つ視点は、当社の革新に欠かせません。
業界経験や知識の有無は関係ありません。実際、中途転職して活躍する人の多くが、建設以外の業界でキャリアを積んでいる人です。業界の常識に染まっていないおかげで、斬新な発想が生まれやすいのでしょう。
現在活躍している中途転職者の管理職の方々も、前職は建築業界ではありませんでしたが、優秀な方は仕事の本質やコツを理解しているのでしょう。覚えもとても早く、今は会社にとって欠かせない存在となっています。
私が思いつきで言ったアイデアも、きちんと整理し、具体的な行動目標にまで落とし込んでくれるのは本当にありがたいですね。
私は、この会社を家族と過ごすような居心地の良いコミュニティにしたいと考えています。利益ももちろん大事ですが、利益を生み出すのは人ですから、経営者にとって重要なことは、皆が働きやすい環境を整えることだと思っています。
新しい人材も、家族のような気持ちで迎えます。100周年を目指し、ともに上を目指していきたいですね。