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独自ブランド“Armadillo”の展開でIoT社会の実現をリードする。

株式会社アットマークテクノ
代表取締役 實吉 智裕

更新日:2023年2月01日

1974年生まれ。旭川工業高専、北見工業大学を卒業後、株式会社ビー・ユー・ジー(現:DMG MORI Digital株式会社)に入社、ISDNルータなどの通信機器のハードウェア開発に携わる。1999年、株式会社アットマークテクノを立ち上げ、ネットワーク機器向けの技術開発をスタートさせる。2001年、現在のメインブランドである『Armadillo』の初代モデルを開発。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

2001年、自社ブランドの組み込みプラットフォーム『Armadillo』をリリース。

私が事業をスタートさせたのは1999年。25歳の時です。前職で通信機器の開発に携わっており、また家電とインターネットの融合に興味を持っていたこともあり、「ソフト・ハード両面から情報家電に関わる技術開発をしてみたい」という気持ちがありました。

当初は、事業の安定化のために受託開発を行っていました。多様なお客様から依頼をいただけるのはありがたいのですが、受託となると案件ごとにやることが違うため、ノウハウの蓄積も進みません。

案件ごとにまたイチから…では効率が悪いので、開発のベースとなるプラットフォームがあるといいな、と感じるようになりました。また、自社製品を生み出して事業の柱にしたいという想いもありました。

そのような発想で、受託開発業務の一方でコツコツと1年程度かけて開発し、2001年にリリースしたのが、『Armadillo(アルマジロ)』です。ネットワークに強いLinuxをOSとして、CPUボードを組み合わせることで、様々なネットワーク機器を生み出すプラットフォームとなる製品です。

Armadilloの名は、プロセッサがArmであったことをヒントに、「武装した小さな生き物」という語源を持つ動物のアルマジロからもらいました。現在に至るまで当社の中核ブランドとなっています。

IoT化に欠かせない組み込みプラットフォームを提供。

今日、IoTという言葉が広く普及しています。Armadilloは、IoTを実現するためのデバイスとして幅広く活用されています。Armadilloの市場は、大きく二つに分かれています。

一つはCPUボードとしての『Armadillo』であり、IoT装置を作る産業機械・精密機器などのメーカーに活用いただいています。遠隔にある物を、ネットワークを介して計測する、監視する、制御するといった装置にArmadilloが組み込まれています。

Armadilloはいずれも小型・省電力で、どのような装置にも組み込みやすくなっています。Linuxの豊富な開発資産を活用できるほか、PythonやRubyといった言語による設計も可能。温度・振動などの厳しい環境下にも強く、長寿命設計になっているなど、あらゆる面に配慮された日本製CPUボードである点が、選ばれる理由でしょう。

もう一つはIoTゲートウェイとしての『Armadillo-IoT』であり、IoTシステムを作る通信系・情報系の企業に活用いただいています。IoTゲートウェイは、各種センサや装置からデータを収集し、安全にクラウドサーバに送るための中継機として機能します。当社はCPUボードであるArmadilloで培った技術ノウハウを活用し、IoTゲートウェイも開発・製造しています。

IoTゲートウェイは、センサや装置からデータを集め、セキュリティ確保や、データの加工処理(エッジコンピューティング)を施すなど、センサ単体では実現できない役割を果たしているのです。

そんな中、自由なアプリケーション開発が可能で、長寿命設計となっている『Armadillo-IoT』は、IoTシステムを構築する人々にとって、欠かせないハードウェアとなっています。

組み込みCPUボード、IoTゲートウェイなどのArmadilloシリーズは、あらゆる業種で活躍しています。例えば電力・水道設備の制御・監視、スマート工場の実現、道路・河川などの自然災害監視、遠隔で暮らす高齢者の見守り、店舗における顧客動線の解析…といった具合。ネットワークを使った様々なシーンにArmadilloが採用されているのです。

Armadilloは、知名度がある日本の機器メーカーの大半に購入していただいています。どこか一つの系列が大量に購入するわけではなく、いろんな規模のお客様に利用してもらえる裾野の広い製品である点も特徴と言えるでしょう。購入実績は、シリーズ累計で65万台に及びます。

コスパの良さと技術の多面展開で、顧客の信頼を獲得。

CPUボードにおける国内の市場は大きく三つのクラスに分かれています。一つは1万円以下のロークラスで、ここは機能や性能よりも価格が最も重要な要素となり、CPUボードの市場というより半導体チップメーカーの市場です。次に、数万円のミドルクラスで、私たちの提供する製品はここに属します。そして産業用PCをベースとしている10万円以上のハイクラスです。

ミドルクラスにおける競合会社は、国内にはほとんどいません。他社からの請負で開発/製造している企業はいますが、自社ブランドの標準製品のみを提供するのはアットマークテクノくらいです。

厳しい競争の中で生き残れた理由の一つは、コストパフォーマンスの良さでしょう。当社は実績がなかった分、良いものをより低コストで提供することに力を入れていました。この点がお客様の評判を呼んだのだと思います。

もう一つは、IoTゲートウェイへ製品を広げたことも大きいと思います。一つの技術を複数分野に展開させたことで、売上の伸びが加速しました。

価格面で言えば海外製の格安のCPUボードもあります。しかし海外製のCPUボードはサポートが十分でなく、品質保証に難があるなどの問題を抱えるものも少なくありません。長く使うことを前提にすると、サポートがない状態を好ましく思わないお客様は一定数います。そういったお客様にとって、Armadilloは魅力的な選択肢なのでしょう。

ラインナップの拡充と、サポートの強化に力を入れたい。

IoTやAIは、ますます発展します。リモートワークも増えていますし、工場・店舗の省人化・省力化は強まるばかりです。これに伴い、Armadilloへの需要も高まっていくと思います。

社会のニーズに合わせ、私たちも製品をさらに磨かなければなりません。現行のArmadilloはミドルクラス向けですが、もう少し上下のクラスを意識したラインナップの拡充も必要だろう、と考えています。薄利多売品に手を出すつもりはありませんが、お客様のコスト要求にもできる限り応えなければなりません。

加えて、製品の長期使用を見据えたサービス提供体制も整備しないといけません。当社の製品は、社会インフラにも用いられます。その製品に十分なメンテナンスが施されないのでは、ユーザーは安心して使用できません。

例えばパソコンの世界では、定期的にOSのアップデートを行って、新しい機能に対応したり、セキュリティを強化したりしています。一方、IoT機器はどうか。アプリケーション開発ができ、搭載する点では、パソコンもIoT機器も差はありません。そうであれば、自動的にソフトウェアをアップデートするサービスも必要になってくるでしょう。

人の目につかないところで活躍するIoT機器は、悪意ある第三者の標的になることが予想されています。セキュリティのアップデートが必要になった時だけでなく、新しいソフトウェア機能を開発した際にも、素早く展開できる仕組みを整備しなければなりません。従来のものづくりに対する技術だけでなく、クラウド側も含めた総合的な技術力が必要だと思います。

いずれは海外でも製品をリリースしたいと考えています。現状でも当社製品がお客様の装置に内蔵された形で海外に出ているものはありますが、自社独自の取り組みはまだこれからです。市場として大きいのはやはりアメリカですが、将来性を考えるとアジアも期待できます。

社会インフラに数多く使用されている当社製品の実績が、インフラ整備を急ピッチで進める発展途上国の市場で優位に働くかもしれません。そのためにも、ラインナップの充実と、長期使用をサポートする体制の確立は不可欠ですね。製品力を磨いた上で、海外に進出します。

技術者として、新しいことを学ぶ姿勢があるかどうか。

ハード・ソフト両面からものづくりを行っている当社には、ハードウェアエンジニア、ソフトウェアエンジニア、それにシステムエンジニアと、様々な技術者が必要です。仲間が増えれば増えるほど、実現できることも多くなっていくと思います。

スキルや経験ももちろんなのですが、一番重視するのは、技術者として進んで新しいことを学び、積極的に新しい技術を使っていこうという熱意を持っているかどうかですね。オリジナルな製品で勝負している会社ですので、言われた仕事だけを漫然とやっているだけでは成長がありません。

自ら新たな価値を見出そうとする意欲のある技術者とともに、Armadilloブランドを進化させていきたいと思います。

編集後記

コンサルタント
佐々木 はつみ

25歳という若さで事業をスタートした實吉代表ですが、当初は試行錯誤の連続だったようです。「開発のベースとなるプラットフォームがあるといいな」という思いから開発した自社製品の「Armadillo」。その利便性や耐久性から、知名度がある日本の機器メーカーの大半に購入されるようになり、シリーズ累計で65万台を超える出荷実績を誇る製品となりました。

今後はラインナップの拡充も予定しており、アットマークテクノ社における技術者のニーズはますます高まっていくと予想されます。将来的には海外での製品リリースも検討されているとのことで、同社の成長がますます楽しみです。

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