企業TOPインタビュー

ゲーム、メタバース開発に注力。「最先端の最後尾」で独創性を発揮。

株式会社インフィニットループ
代表取締役 松井 健太郎

更新日:2023年1月25日

北海道北広島市出身。新卒で札幌市のシステム開発会社に就職。その後ベンチャー企業を経て、フリーランスのエンジニアとして活動を開始。順調に拡大を続け2007年には法人化し株式会社インフィニットループを設立。2019年7月には株式会社ドワンゴとの合弁会社である株式会社バーチャルキャストを設立し代表取締役社長に就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

ブラウザゲーム「三国志」の大ヒットから、ゲーム開発がメインに。

私がフリーランスのITエンジニアとなったのは2003年。私は生まれも育ちも、大学も就職先も、すべて北海道。一度道外の景色を見てみようとバイクで日本一周の旅に出たのですが、やはり「住みやすさ・働きやすさのバランスでは、札幌が一番」と戻ってきた後のことです。26歳でした。

大学を卒業した頃、いわゆるITバブルが起こりました。同世代の人間がどんどんITベンチャーを起業しているのを見て、私も刺激を受け、少しずつ仲間を増やし、2007年にインフィニットループを設立しました。

飛躍のきっかけとなったのは、ブラウザゲーム「ブラウザ三国志」です。たまたま依頼を受けて開発することになり、3~4人のメンバーで構築したのですが、驚くほどのヒットとなりました。恐らく300~400万人のアクティブユーザーを獲得したと思います。

ブラウザ三国志がリリースされた頃は、「ソーシャルゲーム」という言葉も、「高級ガチャ」という仕組みもそれほど広く浸透していませんでした。いわばトレンドの走りに乗ったのがブラウザ三国志だったと思います。このヒット以降、当社の事業はゲーム開発がメインとなり、ソーシャルゲーム、スマホゲームなど幅広いジャンルで展開しています。

今やゲーム開発は、複数の企業のエンジニアが100人単位で参加し、数十億円のコストをかける一大プロジェクトになっています。企業ごとで担当領域を分けるのですが、当社が得意とするのは、PHPやMySQLを使ったサーバサイド開発。高負荷大量アクセスに耐えうるシステムを構築できるのが強みです。

「最先端の最後尾」で、世の中を驚かせるサービスを発信。

当社は「最先端の最後尾を独走する」という社是を掲げています。ITは全業種の中でも変化の早い、最先端の分野だと思いますが、そのITにおいて世界の最先端を走るのは、GAFAMに代表される巨大企業や、MIT・シリコンバレーから誕生する気鋭ベンチャーでしょう。北海道にいる私たちが、世界のトップランナーと正面からぶつかり合うのは、さすがに悪手です。

しかし、「私たちに最先端技術が扱えないのか?」というと、そうではありません。最先端分野の最後尾を追走することは、私たちにもできます。その領域で独自の知恵や技術を発揮し、インパクトのある製品・サービスを世の中に送り出すことは、企業規模が小さくとも、高学歴でなくとも、十分可能なのです。

最先端のさらに先端で戦う技術者は、新たなITインフラを生み出す役割を果たしてくれます。そのインフラを利用し、世の中の役に立つ新たな価値や、独自性のある技術を創造することが、地方に根ざす私たちの役目ではないでしょうか。その思いを「最先端の最後尾を独走する」という言葉に込めました。

ドワンゴと合弁で、メタバース空間「バーチャルキャスト」を創造。

VR(バーチャルリアリティ)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)のいわゆるXRアプリ開発にも力を入れています。バーチャルツアーで仮想空間を体験したり、コンサートや旅行を楽しむなど、時間・地域を問わず、あらゆるサービスが可能になります。

2018年には株式会社ドワンゴと合弁し、株式会社バーチャルキャストを設立。同社は、社名と同じ「バーチャルキャスト」というVRライブ・コミュニケーションサービスを管理・運営しています。

設立の2年ほど前からVRに魅力を感じ、あれこれ手を付けていたところ、プロトタイプが面白いものになったのです。そこで、ドワンゴ社に協力してもらい、リリースすることになりました。

バーチャルキャストというVR空間では、ユーザーが自分のなりたいキャラクターに変身して、さまざまな体験ができます。ライブに参加したり、ゲームをしたり。友だちを見つけてつながることもできますし、自分がイベントやゲームの主催者になっても構いません。

実は、開発に携わった社員がなぜこのような空間を作り出したのかというと、「VR空間で女の子になってみたかった」からだそうです。YouTubeでは、配信者が男性だとさほど注目されない内容でも、女性が配信すると再生回数が10倍ほど違うらしく、それなら、技術によって「女性になりたい」という願望がかなえられないだだろうか、と。

このような動機でものづくりをはじめ、完成させてしまう点が、「最先端の最後尾を独走する」の真骨頂ではないか、と思ったりもします。

今、メタバースが話題になっていますが、私たちは最初からメタバースを意識してバーチャルキャストを作ったわけではありません。面白そうだと思って作ってみたら、後からメタバースがやってきた、という感じです。

メタバースを活用すれば、教育格差が解消できる。

メタバースについては、もっと力を入れていきたいと思います。ゲームやエンタメ分野もそうですが、私はもう少し地に足のついたサービスにも取り組みたいと考えているんです。

例えば、今は「インターネットの通信制高校」があります。当社は、そこでのVR授業システムの開発に関わっています。生徒は自宅にいるのですが、ヘッドマウントディスプレイをかぶると、自分の周りに先生や他の生徒がいて、授業を受けることができ、単位も取得できる。VR空間では体育祭なども行われ、かなり盛り上がますし、友だちもできる。メタバースを使った教育の仕組みの構築には、大きな可能性を感じます。

少子化が進む日本では、過疎化による公立学校の統廃合という問題が起こっています。一方、学校現場では教員不足が取り沙汰されています。生徒が何人でも、どこからでも参加できる授業空間をメタバースに作り、授業を行えば、学校の統廃合や教員不足といった問題の解消になり得るのではないでしょうか。

世界を見渡せば、そもそも学校が遠すぎて通えない地域に暮らす子どももいます。世界の教育格差を、メタバースが解決できるかもしれません。

暮らしやすく、働きやすい北海道に貢献したい。

私が人材を評価する際に重視するのは、技術に対する熱意と好奇心、仕事を楽しむ姿勢、そして、地元が好きかどうか、です。北海道の出身者か、あるいは出身者に負けないくらい、北海道が好きな人か。北海道のことを考えるマインドを持つ人と一緒に働きたい、と思います。

今はテレワークも進み、勤務地にこだわる意味は薄れているかもしれません。北海道に住みながら東京の会社に勤務もできるし、逆もしかりですから。

しかし、地元のことを一番に考え、地元に貢献できるのは、やはり北海道に腰を据える会社ではないでしょうか。ここで雇用を生み、面白い仕事を提供できてこそ、「やはり札幌は暮らしやすいし、住みやすい」と感じてくれる人が増えるのですから。

私は、起業以来「会社を大きくしたい、儲けたい」を第一義に置いたことはありません。ある程度の規模がないと物理的にこなせない、という理由で仲間を増やしてきましたが、拡大すること自体が目的なのではありません。おかげで、おおよその依頼はやりくりできる規模になったと思います。

これからは分社化を促進していきたいと考えています。メタバースにおける事業成長を考えると、関連会社・グループ会社は増えていくでしょう。分社するには、それだけリーダーが必要になります。昔の私のように起業に興味を持つ人なら、当社は経験を積む良い機会になると思います。

ソースコードを自在に操ることで、人々を楽しませたり喜ばせたり、楽にしたりするプログラマ、ITエンジニアの仕事はかっこいいし、面白い。心からそう思える人、そして北海道が好きな人をお待ちしています。

編集後記

コンサルタント
伊藤 千奈美

松井代表への取材を通じ、北海道とエンジニアへの強い思いを感じました。大好きな札幌市で、個人事業主として8畳のスペースで事業を始め、現在でも「かっこいいプログラマになりたい」という想いは変わらないそうです。

北海道が好きで、技術に対する熱意と好奇心がある方と働きたいという想いは、代表の実体験から来ているのだと思います。

「最先端の最後尾を独走する」という社是には、インパクトを感じるとともに、非常に練られた言葉という印象を受けました。共感される技術者の方も多いのではないでしょうか。

VRやメタバースといった注目分野も手掛けており、今後さらに「同社なりの最先端」を生み出し続けてくれることを、楽しみにしています。

関連情報

株式会社インフィニットループ 求人情報

企業TOPインタビュー一覧

ページトップへ戻る