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リサイクルというインフラを担い、地域循環型社会の形成に寄与する。

株式会社鈴木商会
代表取締役社長 駒谷 僚

更新日:2022年9月28日

1984年生まれ。立命館慶祥高等学校を卒業後、立命館大学文学部に進学。卒業後は、株式会社北洋銀行に入社し5年ほどバンカーとして金融事業に従事したのち、2013年4月に株式会社鈴木商会に入社。2014年11月に、父・駒谷嘉一氏より事業継承し、同社代表取締役社長に就任。
※所属・役職等は取材時点のものとなります。

創業70周年、道内トップクラスの総合リサイクル企業。SDGs達成に向けて広がるビジネス。

当社は、「我社は世界的視野に立ち 誠心誠意顧客の要望に応えて 良品を速やかに廉価に生産し また、販売して社会に奉仕する」という社是の元、1953年の設立から70年にわたって、リサイクル事業を展開してきました。その領域は4つに分かれています。

1つ目が産業廃棄物や解体現場などで生じる金属スクラップを回収し、自社工場で加工・処理する「資源リサイクル」。

2つ目はパソコンなどのOA機器や情報家電を解体・分別し、金属やガラス・プラスチック・金銀などの循環資源を回収する「家電リサイクル」です。

また、3つ目の事業として、アルミホイール、アルミスクラップを回収・処理してアルミインゴットに加工する「アルミ精錬」も行っており、道内最大規模となる月産2000トンのアルミ合金再生工場が稼働中です。

そして4つ目は、役割を終えた自動車を引き取り、フロンガスやエアバックの適正な処理を行った後、タイヤやオイル、金属スクラップなどをリサイクルする「ELV(自動車リサイクル)事業」を進めています。

他方、近年、社会的にSDGsの達成が求められる中、上記以外にも事業の領域が広がってきています。たとえば、2022年には、主としてナイロン漁網を処分する「漁網リサイクル」もスタートさせました。

漁業は北海道にとって重要な産業の一つですが、そこで使用する漁網の処分に漁業関係者が頭を悩ませていると聞き、事業化しました。回収した漁網からナイロン樹脂を再生し、バッグ素材などに使用します。

利益は決して大きなものではありませんが、今後はブイや漁業関連の漁具などへ広がることが考えられますし、なによりSDGsでも課題となっている海洋プラスチック問題の解決にも寄与できるので、漁業関係者と手を携えながら進めていきたいと思っています。

鉄を扱っていると、世界情勢が見えてくる。

私たちの事業をさらにシンプルに捉え直すと、回収して再生する「リサイクル」と、再生の難しい「廃棄物」に分けられます。このように整理した時、当社売上の大部分を占めるのは「金属リサイクル」です。第一に鉄、次にアルミ、その後に銅で、これらで売上の大半を占めています。

実は、優秀な再生資源である鉄は、同時に世界の動きが見える素材でもあります。私たちはリサイクル鉄を海外に輸出しますが、例えば戦争などの大きな社会変動が起こると、鉄の価格は敏感に反応します。

入手しづらくなって価格が高騰する場合もあれば、逆に輸出入の流れが大きく変わって当社輸出先に安値の鉄が出回り、売りにくくなることもある。もちろん、為替変動にも影響を受けます。当社は社是の最初に「世界的視野に立ち」という言葉を掲げているのですが、金属リサイクルなどはまさに世界情勢も注視していないといけない分野なのです。

世界的に鉄の需要が急増している中で、 私たちは北海道を基盤に、質の高い加工技術と安定供給で全国・海外の企業ニーズにお応えしてきました。とくに安定供給という点でいえば、2026年をめどに、石狩湾新港に国際物流ターミナルが整備されます。これは当社にとっては追い風です。

これまではポートが2つしかなく、船は来ているのに2~3週間待たないと船積みできないことも多々ありました。しかし今回の整備によりポートが増設されるので、待ち時間が短縮できます。現在3ヶ所に点在する当社のバックヤードも、新港で1ヶ所に集約できる予定です。これにより、大幅なスピードアップが可能になるでしょう。

「解体・撤去」「IT」の分野にも進出する。

今後は新しい領域にも進出したいと考えています。その一つが「解体」です。

建物や設備を解体・撤去することで「リサイクル」や「廃棄物」といった事業がスタートするのですが、さらに上流の解体・撤去から担い、再生資源を生み出す体制を整えれば、事業がさらに効率的になり、お客様のニーズにも一気通貫して寄り添っていけるかたちになります。少子化が進んでいることもあり、建物・設備の解体ニーズは今後ますます拡大するでしょう。

もう一つ、力を入れているのがITです。2019年、EZOTECというシステム開発の子会社を設立しました。リサイクルの業界はDX化どころかITの導入すら遅れ気味で、未だにFAXで情報や書類をやり取りしています。

何とか改善しようと外部のIT専門会社に相談しても、法的規制などの多いニッチな業界に向けたシステム構築は難しいようで、前向きに取り組んでくれません。

であれば、いっそ自分たちで作ってしまおうと設立したのがEZOTECです。業界内には、同様にIT化が進まず悩んでいる会社もあるでしょう。自社用に開発したシステムを、それらの会社に供給するのも可能ではないでしょうか。

IT化が進めば、サービスも多様化するでしょう。例えば再生素材の回収に協力いただいたユーザーに、バーコード決済で使えるポイントで還元する、なども実現できそうです。こういう仕組みにより、社会のリサイクル意識をさらに高める効果も期待できます。

地産地消型のリサイクルを確立するために。

私たちは、北海道に根差す企業として、資源リサイクルに携わる企業として、「地産地消のリサイクル」に努めています。実は、当社のリサイクル事業には「EZOECO」というブランド名を付けているのですが、このEZOECOには、資源の再利用を通して北海道の美しい環境を守っていくという願いをこめています。

地産地消のリサイクルを実現するためには、従来のリサイクル事業はもちろんですが、たとえば、資源として再活用できるものを増やすことも、私たちの抱える重要なミッションです。リサイクルに至らない廃棄物の中にも、再生できる素材がないわけではありません。

不純物と再生素材の分離技術をレベルアップしたり、再生素材をある程度の規模で集められれば、埋め立てられるものを少なくできるはず。プラスチックの問題に関しても、そもそももっと効率よく分別できれば、リサイクルできる量が増え、その分廃棄されるプラスチックを減らせるかもしれません。

その他にも、北海道在住の人々のリサイクルに対する意識と知識を高めたり、さらには自分たちで最終製品として地域の人々に提供できるようになると、地産地消型のリサイクルが確立していきます。社会の持続可能な成長という観点からも、私たちの果たす役割は決して小さくないのです。

「リサイクル」に加え「解体・撤去」「IT」。新たな技術による、より高度なリサイクルの実現。私たちは、これらを柱に、事業を発展させていきます。そのための資金調達の手段として、現在、将来的なIPOも見据えており、今後さらなる成長を目指していきます。

地域循環型社会の形成には、多くの人材が不可欠。

私たちの業界は、全国展開するナショナルチェーンが1社もありません。当社のように鉄、アルミ、家電や自動車と複合的にやっている会社すら珍しく、鉄だけ、アルミだけの会社も多いのです。無論、今後どこまでもこの構図は崩れない、とは言えません。

しかし大手や外資が一気に市場を奪ってしまうかと言えば、そう簡単でもありません。リサイクルは単に集めればいいわけではなく、法的規制や許認可といったハードルをクリアする必要があります。そうしながら、地域から求められる素材を形にする技術が要求されるのです。

私はリサイクルを、社会の主要インフラの一つと考えています。解体すべき建物があるのに放置されたり、廃棄物が散乱している街で、誰が暮らしたいと思うでしょうか。金属の回収が進まないことにより、ものづくりが停滞しているような社会で、人々は豊かな生活を送れるでしょうか。

廃棄物・リサイクルといった業務が、人の目に触れることはあまりありません。しかしそれが有効に機能しなければ、日常がストップしてしまいます。そういう意味でリサイクルはインフラであり、私たちはインフラを支える縁の下の力持ちなのです。

こうした鈴木商会の事業の意義や、リサイクルの高度化によって地域循環型社会を形成する、というミッションに共鳴する方であれば、当社で大いに活躍いただけるのではないでしょうか。

特に必要なのは、マネジメント層の拡充です。当社の方針を理解し、メンバーに浸透させてチームを統率するリーダーが、事業に欠かせません。解体工事も広げていきたいので、土木施工管理技士などの資格を持つ方も必要です。リサイクルの分野で、新たな価値を創造したい。そんな意欲を持つ方を歓迎します。

編集後記

チーフコンサルタント
笹本 香菜

鈴木商会という会社は、創業70年を超える歴史ある企業でありながらも、SDGsやIT化・DX化の時流に対して攻めの姿勢でビジネスを広げてきた、いわば進化する老舗企業です。今回のインタビューでは、駒谷社長が抱く社会インフラ企業としての使命感や、「北海道に根差す企業として地産地消型のリサイクルを実現したい」という言葉がとても印象的で、同社の進化の根源となる想いの部分に触れることができたように思います。今後も、さらなる進化に向けて、環境・リサイクル分野から新たな価値を創造し続ける同社の挑戦を楽しみにしています。

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