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高性能の臨床検査薬を独自開発。業界最高水準の技術を、世界へ。

株式会社セロテック
代表取締役社長 廻谷 隆行

更新日:2022年9月07日

1974年札幌市生まれ。1993年札幌月寒高校卒業。
1997年に明治大学法学部を卒業し、2002年株式会社セロテック入社。
2016年社長就任。北海道製薬協会副会長。
※所属・役職等は取材時点のものとなります。

独立系の臨床検査薬メーカーとして、40年の歴史を刻む。

健康診断で、血液検査や尿検査を経験した人は多いと思います。良くない数値が出たので、病院に行って時間をかけて検査してもらった、という人もいるでしょう。そういった検査に使用する臨床検査薬を独自に開発・製造し、全国の病医院や検査機関に提供しているのがセロテックです。

薬であっても、検査技師などの医療従事者が扱うものなので、一般消費者と接点を持つことはありません。しかし、検査がなければ診断はできません。肝機能を測るAST(GOT)・ALT(GPT)や、腎機能を測る尿素窒素・クレアチニンといった数値は、血液や尿に生化学検査用試薬を加えることで判定されます。

裏方ではあるものの、私たちもまた医療を通じて一般の人々を支えている。そんな自覚とプライドを持って事業を推進しています。これ以外に、細菌や真菌などの微生物を培地上で増殖させ、その数や種類・性状を調べるための細菌・真菌検査用製品も扱っています。

競合は大手が多く、当社は小さい方から数えた方が早いくらいです。大手企業がひしめく中、規模の大きくない独立系の当社が40年続けてくることができたのは、大手の参入しにくいニッチ市場で技術を磨いてきたからです。

「規模の経済」が働かないニッチ市場で、ロングテール戦略を推進。

健康診断を見ればわかるように、検査というのはほとんどの成人が経験します。健康診断を受ける成人の大半は、それほど健康に問題がなく、検査しても異常値はあまり出ません。

つまり、健康診断で使用する検査薬は、それほど性能が高くなくていいのです。異常値の確率の低い人々に対し、性能の高い検査薬を用いるのは、明らかにオーバースペックです。

大手企業からすると、性能が高くなくて、大量消費が見込める健康診断向けの検査薬は、規模の経済を働かしやすい魅力的な市場です。

一方、当社が主に対象とするのは、病院や検査機関で用いられる検査薬です。病院に来るのは、体調が思わしくないか、健康診断で異常値を指摘されたか、より高度な検査を必要とする人です。

そこでの検査薬には、正確な診断・治療のため高性能が求められます。しかし、高性能だからといって、そこまで高い利幅が取れるわけではありません。リーズナブルな価格と性能の高さを両立させなければなりません。

しかも、数量はそれほど多くありません。検査薬の使用量は、病院によってかなり差があります。外来患者に使うのか、入院患者用か、によってもバラツキがでます。病院の状況に合わせられるだけの種類とパッケージのラインナップを持っていなければ、要望に応えることはできません。すなわち「規模の経済」が働きにくい、ニッチな市場なのです。

大手企業からすると、使用量のラインナップは2つくらいに抑えたいところですが、それでは、ある病院では足りず、別の病院では余って廃棄せざるを得ない、という事態になります。

高い性能が求められる検査薬の分野で、フルラインナップを揃えたロングテール戦略を取っている。そこに当社の優位性があります。

今後は海外へ。東南アジアやアフリカなどでニーズが増える。

少子化で人口が減ると、必然的に検査数も少なくなります。今後の展開として重要なのが、世界市場への進出です。日本では、医療現場で働く臨床検査技師の能力が、総じて高レベルです。海外の検査技師は、試薬を使って異常値が出ると、自分では判断せずメーカーに尋ねるケースが大半です。しかし、日本の検査技師は自分で調べ、自分で判断します。

そんな検査技師の要望に応えるうちに、私たちの作る検査薬のレベルも上がっていきました。性能は世界的にも高水準で、しかもリーズナブル。それが、海外の後進メーカーが日本に入ってくることができない理由にもなっています。その検査薬を、広く海外に供給しようというわけです。

経済の発展により、今日では東南アジアやアフリカなどの発展途上国でも、検査機器を備える病院がどんどん出てきています。人口も増えており、若年層が多いので、検査機会はこれから拡大するでしょう。すでにヨーロッパなどでは、間接輸出という形で供給を開始しています。

医薬品については各国で規制が異なるため、現地の事情に通じた会社に製品を引き渡し、承認などの手続きはすべてお任せする方が、当社の負担は減ります。もし、当社の検査薬に不具合が多く、現地医療機関からの問い合わせやクレームが多くて大変、ということがあれば採用してもらえませんが、今のところそうした問題は起こっていません。

ペットの高齢化に伴う医療問題にも対応していきたい。

海外進出には、いろいろな選択肢があります。間接輸出もあるし、直接輸出もあるし、現地法人やパートナーと提携するやり方もあるでしょう。ヨーロッパでは機械と試薬をセットで売るケースもあります。そうすると協業相手も変わってくるはずです。無理をすると私たちにとってもリスクが大きくなるので、身の丈に合った手段を模索しているところです。

もう一つ、有望なのが「人間以外」の市場です。特にペットですね。ペットも人間と同様、脳梗塞もあれば心臓発作もあるし、がんにもかかります。対象とする動物用にカスタマイズしていけば、バリエーションを広げることは可能です。ペットを家族同様に愛する人は多いので、それらの人々の期待にも応えていきたいですね。

みんなで協力し、チームとして課題を克服する姿勢が大事。

規模の大きくない当社では、従業員一人ひとりが事業を推進していくための貴重な財産です。「ここからここまでやっておけばいい」と仕事の範囲を限定するのではなく、いろんな役割を担ってもらうことになります。

一般的に理系の研究者といえば、ラボにこもって黙々と実験、というイメージかも知れません。しかし、当社では研究者であっても外に出て、例えば大学の研究室に行き、自分の実験について先生方から意見をもらう、などの行動が必要になります。

営業はもちろんですが、製造の人間が顧客である病院や検査機関の声に触れる機会も多いでしょう。当社は現場の話を聞き、そこに応えることで、製品開発の腕を鍛えてきた会社です。お客さまの要望をおろそかにするわけにはいきません。

「自分一人で自身の役割を果たせばいい」のではなく、みんなで協力して手分けしよう、チームとして課題を克服しよう、という姿勢が大事になると思います。

大手に引き抜かれた営業が、やりがいを求めて戻ってくることも。

当社の営業は、同業他社から引き抜かれることが結構あります。競合の営業スタッフ同士が同じ病院で鉢合わせすることも多く、「あの人はどんな営業をやっているか」というのが見えるのです。

そこで「使える」となったら、引き抜きの話が来るわけです。それで大手に移った営業スタッフもいます。

当社にとっては残念なことですが、実は移った営業本人にとっても、バラ色の人生・・・というわけでもないようです。役割分担の明確な大手では、自分の担当範囲が限定されてしまいます。

仕事はやりやすいかもしれませんが、ごく限られた、応用が効くかどうかわからない領域のことばかりを日々やっていると、自分の以後のキャリアを考えた時、不安になる。仕事の面白さを感じない。そう言って、当社に出戻ってきた営業もいます。

待遇の違いなどもあるので、どれがベストかなどと簡単には言い切れませんが、当社は当社なりに、大手にはない仕事のやりがいがあると実感します。ニッチな市場で、お客さまの声を大事に、着実に技術を重ねてきました。

おかげで、世界に打って出るだけの商品力を築けており、自己資本比率90%で、チャレンジするための余力もあります。

社会の医療を支える「縁の下の力持ち」として、共にがんばっていただける方をお待ちしています。

編集後記

コンサルタント
伊藤 千奈美

廻谷社長のインタビューを通じて、一般消費者と接点を持つことはないものの、創業以来の理念に続き、「予防医療で世の中をもっと健康に」「恋人、友人、家族。愛する人に健康でいてほしい」という想いを支えることを使命として、社会的意義が高い事業を進め続けていることに大変感動しています。

同社は、ニッチな市場でお客さまの声を大事にし、着実に技術を重ねてきた結果、多くのラインナップを揃えたロングテール戦略で国内外において優位性を確立しています。

現在は、次の事業フェーズに向けて次世代の中核人材を募集しており、「予防医療で世の中に貢献したい」という意欲をお持ちの方なら、仕事の幅や深さを広げて働きがいを感じ、成長できる環境だと考えています。

今後の事業展開を大変楽しみにしており、応援していきたいと思います。

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