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ホテル・旅館業のイメージを上げる本気の経営改革が進む。

野口観光グループ
取締役副社長 小野 友勇喜

更新日:2017年1月27日

1949年8月14日函館市生まれ。
1968年8月野口観光グループ入社、1984年取締役登別プリンスホテル支配人。
1988年同グループ常務取締役、1991年専務取締役、2002年取締役副社長就任。
※所属・役職等は取材時点のものとなります。

北海道観光の現状と今後

北海道というと大自然のイメージがあり、かつては「一生のうち一度は北海道」という憧れの対象でした。飛行機によるスピード化の時代を迎え、気軽に何度も来られるようになり、お客さまの訪問の機会は増えました。

このところの入り込み数は右肩上がりですが、これは海外からのお客さま(インバウンド)が押し上げています。反面、国内のお客さまの動きが鈍いです。これは、訪問先の選択肢が北海道だけでなくなっていること、そしてレジャーそのものがバラエティに富んできたことが背景にあります。

また、旅行の形態も、かつての「募集型」という「好き嫌いに関係なく色々な場所に連れまわされる」旅行から、多種多様な「個人型」旅行にシフト。旅行の形態は、この10年間で様変わりしてきています。私どもホテル・旅館業は、この個人型への対応を怠れば置いて行かれる環境にあります。

「個人型」は選択肢が広く、選ばれる競争相手が全国各地に広がっています。個人の方へのアピールするためは、「北海道ならでは」のものを作り上げていかなければなりません。かつてのように「自然と味覚だけ」では勝てません。お客さまが何度でも行きたくなるようなホスピタリティあるサービスなど、付加価値を高める企業努力が求められているのです。

高品質・高稼働

2000年に有珠山が噴火し、観光客の入り込み数が落ち込みました。北海道外の方から見ると、有珠山の位置がよくわからないために、「北海道は危険」というイメージが広がったのです。

これがきっかけとなり、それまでの大型団体の時代から個の時代へ、本州からのお客さま頼みだったホテル・旅館が、道内のお客さまをターゲットにと、変化する流れに繫がっていきました。

それまでの北海道のホテル・旅館は、大きなお風呂と大きな宴会場があり、部屋数が多いことが重要な要素でした。それが、個の時代へと転換した瞬間、畳の宴会場の稼動が落ち、施設(ハード)面を切り替えざるを得なくなりました。

大型団体向けから個人向けに転換するため、お風呂や食事や部屋など、ホテル・旅館にとっての商品を、お客さまが欲しいものへと作りこんでいくことになりました。

例えば、3~4部屋を1部屋に造作する、部屋に露天風呂を作る、くつろげる備品を用意する、大きなテレビを部屋ごとに置くなどの取り組みを進めました。

他地区、そして同業他社との差別化を推し進め、稼動が下がった分をいかに単価向上でカバーできるかに腐心しました。食事もお客さまのペースに合わせてサービスを提供、食事の時間や好き嫌いも個人の意向に対応しました。

人手をかけ、接客のレベルを上げたのです。現在は望楼シリーズの「高品質」、風のシリーズの「アッパーミドル」、「亭」がつく「リーズナブル」の3つのグレードをご用意しています。

人事元年

創業者の野口秀次は、当時から今の状況を見通していたのでしょう。当社は、平成元年に「人事元年」を掲げ、それまで採用してこなかった新卒大学生の採用に取り組み始めました。北海道では、昭和47年(1972年)の札幌オリンピックまで、ホテルらしいホテルもなかったのですが、札幌オリンピックをきっかけにホテルが増えました。

ホテルは、「フロント」や「ドアマン」など、職種名やユニフォームが洋風で格好が良く、旅館業のイメージとは相当な差がありました。当社のようなリゾートにある旅館でも、「イメージを変革して、人材を求めなければならない」となったのが、この平成元年の「人材元年」だったのです。

「リゾート地で働く人にも喜びを」「市内のホテルで働く人と差をなくそう」「ホテルと旅館の距離を縮めていこう」という取り組みを始めたのが、平成元年でした。

そんな中で、支配人役員を育てていきました。異業種からの採用にも取り組んできました。私は、異業種の人材でホテルに通用しない人材はいないと考えています。異業種のよさを、ホテル旅館業として吸収していこうと思っています。

ですから、中途入社は大歓迎です。当社では、異業種からの転職でも、戦力化するまで徹底した研修があります。どの事業所でも研修があり、すべてのカテゴリーの宿で通用するように育成します。求人同様、研修にも相当な投資をしているのです。

異業種の方にもホテル・旅館の面白さを知って欲しいと思います。当社では管理職へのコースがありますし、年収を増やす、つまり稼げるコースもあります。あるいは、IT出身者ならネット販売にチャレンジするなど、やりたいことにチャレンジできる環境があります。

ホテル・旅館の面白みは、業界の経験がない人でも入社して早々にベテランと遜色のない仕事ができるところにあります。例えば、当社は北海道日本ハムファイターズのスポンサーですが、バッターボックスが映る時、かなり高確率でTVに映る広告を企画したり、優勝記念セールを選手の背番号にちなんだ価格設定にして数千名の申し込が来たり。

ほかにも、売店でも化粧品やシャンプーなどオリジナルのPB商品を開発したり、調理部門でも新料理を入賞したらバイキングコーナーで出せるなど、誰もがチャレンジできる環境が整っています。もちろん、失敗も大歓迎です。

北海道のホテル・旅館業のイメージを上げる

当社は、職業訓練校を2018年に立ち上げます。これは、北海道のホテル・旅館業のイメージを上げることが理念です。

さきほど申しあげたように、業界の面白さややりがいを思い切り広げていきたいと考えております。そうしなければ、将来業界自体が人材不足で立ち行かなくなる。

ホテル・旅館業は、世の中が休んでいる時に働く仕事です。そして、このことが離職に繫がりやすいのも事実です。しかし当社では、リフレッシュ休暇として連続5日の休暇を取得することを推進しており、その取得率は100%。本気の改革が進んでいます。

昨今では、ホテル・旅館というくくりにとどまらず、サービス業全体の印象が悪化しています。大変な商売なんだ、と。しかし、こうした取り組みを進め、私はサービス業ほどやりがいがある商売はないということを多くの人に理解して欲しいと考えています。

サービス業は朝早くから夜まで働く仕事、サービス業は手っ取り早く働ける仕事、といった世間一般のイメージを、職業訓練校によって変えていきたいと考えています。

編集後記

コンサルタント
高岡 幸生

小野副社長の穏やかな眼差しに、北海道観光をその目で見続けてきた愛情と自負を感じたインタビューでした。

ここ数年の人事改革にかける同社の意志は凄まじいものがあります。ホテル・旅館業を代表する企業の一つとして、強烈な使命感を感じます。このことが職業訓練校への取り組みなど、同業他社には見られない特徴ある方針へと現れているのだと思います。

北海道に留まらず、日本各地に展開する同社の改革が業界全体に良い影響を及ぼし、ニッポン全体のホテル・旅館業、ひいては観光産業にまで同社の好影響が波及していくことを祈りたいと思います。

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