「100年企業」を目指して。自社一貫生産体制を強みに挑戦を続ける。
シンセメック株式会社
代表取締役社長 松本 周平
1982年生まれ。北海道小樽潮陵高等学校、武蔵大学経済学部卒業。道内の食品卸売企業に営業職として就職。その後、東京の機械メーカーに転じて製造・営業を経験するなど約3年間の修業期間を経て、2010年にシンセメック株式会社に入社。製造部、生産管理部で経験を積み、取締役、副社長を経て、2024年4月代表取締役社長に就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
「お客さまの想いを形にする」オーダーメイドの装置を製造。
当社は1950年に、私の祖父・松本六郎が小樽市で創業しました。旋盤1台から始まった小さな工場で船の修理に使う部品加工を請け負っていたと、先代社長である父・松本英二から聞いています。
部品加工だけだと事業に限界があり、売上の拡大も難しくなります。そこで、新規事業としてオーダーメイドの装置製作に着手。設計担当者の採用などを通じて、徐々に事業を拡大していきました。
2004年には札幌市西区に本社を移転し、設計・組立体制を強化。それに伴い装置製作の受注も増加し、売上も順調に伸びていきました。
さらに2008年には、現在の本社所在地である石狩市新港西に新たな工場を建設。多様な装置製作に対応できる体制を整え、これまでに5,000台以上の装置を全国に送り出しています。
「お客さまの想いを形にする」ことをモットーに、機械メーカーとして信頼と実績を築き、現在では売上10億円を超える企業へと成長しています。
すべての工程を担える一貫生産体制と、高い技術が強み。
当社の最大の強みは、装置の設計から加工、組立、制御に至るまで、すべての工程を自社で一貫して行える体制にあります。
たとえば近年では、インフラ関連の設備受注が増加しています。老朽化した下水道管の補修が急務となっており、それに対応する装置を専門企業向けに納入しています。
非常に長いラインの装置で技術面などから対応は簡単ではありませんが、当社がその製作に対応できる理由は、「自社で部品製作ができる」、そして「長いラインに対応可能な組立工場を保有している」からです。これらの要素をすべて備えている企業は全国的にも珍しいと思います。
また、主力の自動省力化装置の製作では部品を内製できることが大きな強みであり、これらに必要な設備を一気に整えるのは中小企業にとって大変困難です。
部品加工から創業した当社だからこそ築けた体制であり、これまでの技術の積み重ねとともに他社との差別化を生む大きな強みとなっています。
平均年齢31.5歳。挑戦し続けることが基本姿勢。
長年培ってきた技術を活かしつつ、新しい取り組みにも果敢に挑戦していくことが、当社の基本姿勢です。当社の平均年齢は31.5歳と若く、新しいことを前向きに取り入れようとする雰囲気に満ちています。
たとえば現在は、現場からの提案で「AIを設計に活用した生産性の向上」について検討しています。また、お客さまからのご要望で自社にない技術が必要な場合も、新たに学び、挑戦する姿勢を大切にしています。
そのための環境づくりは私の重要な役割の一つです。たとえば、社員が機械関連の展示会を見学できる制度を整え、年1回は費用を会社が負担。また、技術士や中小企業診断士といった資格の取得も奨励しており、合格時にはお祝い金を支給する制度を設けています。
ニーズを捉えた自社開発製品でビジネスチャンスを掴む。
主な事業はオーダーメイドの装置製作ですが、一部は自社開発製品も販売しています。
冷凍食品や惣菜メーカーで活用されている「カボチャ乱切り装置」は、これまで手作業で行っていた乱切りを機械化することで、作業の大幅な効率アップと安全性に貢献しています。現在は、ホタテの貝殻から貝柱を切り離す装置の開発にも取り組んでいます。
自社開発製品が多くの現場に導入されると、他の機械の困りごとの相談が得られ、それが新たな仕事にも繋がります。今年6月には、食品機械工業会の展示会にロボットを使ったカボチャ乱切り加工ラインを出展しました。
人の代わりにロボット1台がカボチャの搬送を担当する仕組みで、現時点では人ほど高速に動けないものの、当社の技術力を広く知っていただく目的は達成できました。
今後もこうした次のビジネスにつなげるきっかけづくりに力を入れていきたいと考えています。
事業拡大と「社員・家族の幸せと健康の追求」を両立させたい。
現在、本社敷地内では第1~第6工場が稼働しており、新しい工場を増設する構想も練っています。工場がフル稼働すれば、2030年前後には売上が20億円を超えると見込んでいます。
また、今後は食品分野にも注力してカボチャ乱切り装置に代わる新たな自社製品の開発も行い、BtoCビジネスの拡大も視野に入れながら売上50億、100億円とさらなる成長を目指します。
事業拡大をすることで、自動化・省力化という社会貢献ができると考えていますが、同時に事業拡大が社員の幸せにつながるのかを常に問い続けなければなりません。私が代表取締役に就任したときに経営理念に加えた「社員・家族の幸せと健康の追求」という方針は一貫していきたいです。
新人が入社後にスキルを伸ばし、素晴らしいエンジニアに成長したとき、「幸せと健康」が伴わなければ、技術を十分に発揮することもできません。これを守らなければ、「100年企業」を目指す当社の今後の成長はないと考えています。
何よりも大切なのは、変化を楽しみ、学び、成長する意欲。
当社のさらなる成長を実現するには、社員の声に耳を傾けながら、長く働き続けてくれる環境づくりが必要です。そこでも重視しているのが、「幸せと健康」の価値観です。
その一環として、「健康経営優良法人」の認定を取得し、産前・産後休暇や育児休暇などの制度整備にも取り組んでいます。特に男性社員の育休取得率は直近3年間で100%、平均取得期間は3カ月と、育休は「当たり前」のこととして定着しています。
また、女性エンジニアも活躍できるように「女性活躍推進法行動計画」を策定し、男女問わず働きやすい職場環境づくりを進めています。
さらに、新工場に併設される予定の事務所では一部をカフェ風の休憩スペースとする構想もあり、快適で働きやすい空間プロデュースを外部に依頼する予定です。
取り組みが成功したら、ほかの事務所もリニューアルし、ここで働きたい、働き続けたいと思ってもらえる職場環境づくりを広めていきます。
過去に何かを設計・組立した経験がある方など、当社で少しでも活かせるスキルがある方の入社はもちろん歓迎です。ただ、何よりも大切なのは、「変化を楽しみ、学び、成長し続けたい」という意欲だと考えています。
常に挑戦、成長を続ける当社の環境を楽しみながら、自分も新しいことを学びたい、成長したいという意欲のある方にぜひ来ていただきたいです。