年商1000億円。地元業界のダントツ企業として北海道の旺盛な建設需要に応える。
クワザワホールディングス株式会社
代表取締役社長 桑澤 嘉英
大学を卒業後の1976年、東京海上火災保険株式会社(現:東京海上日動火災保険)に入社。クワザワの経営者であった父から「お前は好きな道を選べ」と言われ、一生骨を埋めるつもりで選んだ会社だったが、父の急逝により状況が一変。悩んだものの、5年後の1981年に株式会社クワザワへの転職を決意する。入社後、札幌建材支店長、東京本部本部長などを歴任。東京進出時、画期的な透湿・防水シートのタイベックで大きな成果を挙げる。1997年、代表取締役社長に就任。北海道におけるセメント・生コン・鉄鋼の取り扱い、住宅資材販売、住宅関連・ビル関連工事の請負施工など業容拡大に努める。M&Aの積極的な推進により、グループ会社は20社にのぼる。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
住宅建材を中心に多角的な事業を展開。
私の祖父である桑澤清が、クワザワの前身となるタイル煉瓦問屋を札幌で開業したのは1933年。それまで小樽の加藤商店という瀬戸物屋に勤めていたのですが、働きぶりがよく成果を挙げていたため、店主から暖簾分けしてもらったのです。
タイル煉瓦問屋として実績を作り、徐々に公共工事にも関わるようになります。その後セメントメーカーと特約店契約を結び、セメントも扱い始めました。さらに住宅用建材分野にも進出するなど祖父は事業を広げ、今日の基盤を作ったのです。
その後、祖父は引退し、20代だった私の父の桑澤義雄が従業員20人程になっていた株式会社桑澤商店を継ぎました。
父は運送会社や生コン工場、住宅会社など10を超えるグループ会社を設立。1971年に株式会社クワザワと商号を改め、建材を中心に多角的事業を展開する企業に育て上げました。そして社長就任からわずか十数年の1973年に、札幌証券取引所への上場を果たしたのです。
しかし父は1976年、53歳で急逝してしまいます。私が大学を卒業し、東京海上火災保険株式会社(現:東京海上日動火災保険)に入社したばかりの頃です。経営陣の一部は私を呼び戻そうとしたものの、社会人1年目の私にできることはそう多くありません。
折悪しくオイルショックの余波で、業績はどんどん悪化。不良債権・在庫が膨らみ、5年ほどで30億円の債務超過に陥ってしまいました。ここに至って、経営陣は主要仕入先の日本セメント株式会社(現:太平洋セメント)に援助を要請。私も創業者一族として責任を果たすため、クワザワに戻る決意を固めました。
日本セメントから招聘した社長は腕力も胆力も豊かで、就任6年後の1988年に30億円の負債を完済。復調の兆しが出てきました。
東京へ進出。全国にクワザワの名を知らしめる。
再攻勢の準備が整ったところで、取締役部長だった私は「本州を開拓すべき」と声を上げました。と言うのも、私には一つの目論見があったのです。
アメリカのデュポン社がタイベックという製品を開発していました。これは住宅の外壁の中に貼って使う透湿・防水シートで、雨風は防ぎますが、屋内の水蒸気は外に逃がすという画期的な製品です。ところが、タイベックを日本で取り扱う会社がまったく現れません。
「タイベックは売れる」と直感した私は、販売契約を結ぶことにしました。部下と共に商品案内ツールを揃え、業界の展示会に出かけて工務店にタイベックを案内して回ると、いい家を作りたいという工務店に採用してもらえるケースが徐々に出てきたのです。
私は「これは全国に通用する商品ではないか」と感じ、東京から発信しようと経営陣に訴えたのです。東京に向かった私たちは、手始めに東京本社の大手ハウスメーカーに営業をかけました。すると、その価値に気づいた会社が採用してくれました。
大手が採用すると、地場ビルダーも興味を示し始めます。1年もすると主要なハウスメーカー・ビルダーの多くが導入してくれるようになりました。そしてタイベックの評判と共に、「クワザワ」の名も一気に全国に広がったのです。
今は他の商社もタイベックをラインナップに加えていますが、それでも全販売数の50%は当社が占めています。バブル景気の時代を迎えるとともに当社の業績も急上昇し、1997年に私が代表取締役社長に就任しました。
M&Aによる事業拡大を推進。
社長就任以降、私はM&Aを積極的に活用。現在までに9社をM&Aでグループに加えながら、事業を拡大しています。ただ、私は闇雲に事を進めるつもりは毛頭なく、経営人材の派遣も含め投資先を適切に管理できると見込めるケースに絞っています。
クワザワホールディングスの売上は連結で約650億円。これは上場企業に適用される収益認識基準にあてはめた数字で、セメント・生コン・鉄鋼事業の売上は除外されています。これらを加えると、グループで1000億円程度になるでしょう。
構成比は、セメント、生コン、鉄鋼、土木の基礎資材で約35%、住宅建材の販売で約35%、工事分野で約30%です。工事には、外壁・水回り・キッチン・バスなど住宅に関わるものとビル外装・内装工事などが含まれます。
事業を進める上で私が掲げているのは「地域ダントツNO.1」、すなわち北海道では他を寄せ付けない存在になることです。例えば生コンにおいては、北海道の流通網における3割のシェアを持っています。これはダントツの1位です。住宅建材でも、北海道ではダントツです。
工事で言うと、北海道のビル内装分野でNO.1。「北海道でビルを建てるなら、クワザワが関わらないと仕上げられない」と言われるほどです。ゼネコンから「クワザワに頼めば間違いない」という厚い信頼が、大きなシェアにつながっています。
全国NO.1の商品としては、先に述べたタイベックがあります。これからも「地域ダントツNO.1」を方針として、着実に成長していきたいと考えています。
新幹線、半導体、データセンター…北海道の可能性は大きい。
北海道は今後の大きな発展が見込める地域です。まず、北海道新幹線があります。2038年度末の札幌延伸を目指していますが、この間、ずっと工事が続くわけです。クワザワは新幹線工事で、生コンだけでも毎年数十億円の売上です。
札幌市の再開発も活発化しており、40階建ビルが1棟、30階建が2棟建ち、それ以外にも多くのビルの建設計画が進んでいます。
加えて、次世代半導体の工場を北海道に新設したラピダス株式会社があります。既に完成した1棟目の工場建設に必要な生コンはすべて当社が手配。ピーク時は全道からミキサー車100台を集めました。この運行管理だけでも大変な作業で、北海道ではクワザワでなければ難しいでしょう。
順調に進めば2棟、3棟目の工場も建設されるでしょうし、100社近くの関連会社進出が見込まれています。事務所や倉庫、社員用住宅の建設需要が増え、千歳市周辺は様変わりするでしょう。余談ですが、エスコンフィールド建設の際も当社が生コンを全量供給しました。
データセンター建設も増えてくるはずです。日本のデータセンターの8割は関東・関西に集中しており、政府は災害リスクを考慮して九州と北海道に分散させる方針を示しました。これにより、北海道に多くの企業のデータセンターがやってくるでしょう。
データセンターで使う電力を賄うため、洋上風力発電などの再生エネルギーの設備が多数計画されており、ここにも建設需要が見込まれています。
石狩、札幌、北広島、恵庭、千歳、苫小牧というベルト地帯が、これから大きく発展するのは間違いありません。北海道の建設業界は明るい展望が開けています。
自分が意欲を燃やすことで、周囲に火が付く。
クワザワのスローガンに「自分が燃えれば他人(ひと)も燃える」というものがあります。これは2代目社長の桑澤義雄が残した言葉です。
私はこのスローガンをタイベックの一件で身を持って体験しました。自分が「これは絶対できる」と信念を持ち、意欲に燃えて取り組んだことで火が付いたのです。
自分がこの商品は絶対いいと思うなら、燃えてお客さまに提案する。するとお客さまは必ず反応してくれます。社内で何か変えようとするなら、情熱を持って周囲に働きかける。それにより、周囲が動き出すのではないでしょうか。
近年の取り組みでは、2018年に自社ビルを建設。敷地面積は2200坪で、前社屋の3倍以上とゆとりを持たせました。社員のコミュニケーションを活発にしたかったので、できるだけ柱は使わず、端から端まで見通せるようにしました。
社風としては、社員が自由に話せる雰囲気を重視しています。私も現場のいろんな声が聞きたいので、年に1回、各拠点を回って新人からベテランまで社員とざっくばらんに話す場を設けています。SDGsにも積極的で、2023年には札幌市所有の森林1haに苗木を寄贈して植樹しました。
教育制度については、新入社員研修、フォローアップ研修を実施。その後は主任向け、課長向け、部長向け、執行役員向けなど階層別研修があります。3~4年目の若手を指名してさまざまな教育を行う若手指定研修も採り入れています。
キャリア転職組が大勢活躍中。
当社が求める人材は、まず、経理、総務、人事、システムなどがあります。M&Aを円滑に進めるには、管理部門のスタッフが欠かせません。また工事分野を伸ばしたいので、ビルなどの内装・タイル工事や、住宅の外壁工事経験者をもっと拡充したいと思います。
資質の面で言うと、相手の意見をしっかりと聞き、自分の意見をはっきり述べる、という点を重視したいと考えています。
自分一人で仕事をやるわけではないし、部下を持つこともあるでしょうから、相手の声に耳を傾け、周囲に配慮しつつ、言うべき事は言う。そういった素養のある方はすぐに活躍していただけるでしょう。また、失敗してもあきらめない、チャレンジの姿勢も高く評価したいと思います。
もちろん、すべて揃っている必要はありません。私も転職組ですし、キャリア組は既に大勢活躍しています。プロパーもキャリアも全社員を平等に評価するので、肩身の狭い思いをすることはありません。
余談ですが、外国人採用も始めました。新卒として中国人を、キャリア組としてスリランカ人を新たに採用しています。こうした外国人の社員と仕事をする機会も増えると思います。
将来性の大きな北海道の地で、共に燃えて仕事に取り組み、確かな成果・成長をつかみませんか。