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不動産企画・開発をベースに北海道の起業家支援に力点を。

株式会社FULLCOMMISSION
代表取締役 山崎 明信

更新日:2024年10月09日

1984年、新潟県生まれ。北海道大学農学部を卒業し、2008年に株式会社リクルートコスモス(現:株式会社コスモスイニシア)入社。不採算不動産の再活用(シェアオフィス、シェアハウス)を複数担当。2011年、株式会社FULLCOMMISSIONを創業。シェアオフィス、ゲストハウス等のプロジェクトで30以上の事業を開発。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

就職活動で感じた札幌・東京の格差解消が起業のきっかけ。

父が転勤族だったため全国各地を転々とし、高校3年の時に山梨県から北海道に転校しました。大学時代はアメリカンフットボール部の活動に熱中。就職活動の時期を迎え、就職先に選んだのがデベロッパーのリクルートコスモスでした。

在学中、生態系に合わせた林業の在り方など環境について学んだことで、「むしろ環境を開発するデベロッパー側に行くべきではないか」と考えたのです。リクルートコスモスはデベロッパーでありながら環境への配慮も大切にしていましたし、最終的には独立を考えていたため、起業する意欲を持った人が多い同社への入社を決めました。

そもそも起業を意識したのは、就職活動が一つのきっかけです。両親が住んでいた埼玉県を拠点に就職活動をしたことで、札幌との地域間格差を痛感しました。東京の学生は情報も選択肢も豊富で、1〜2年生からインターンシップを経験して就職についてよく考えていました。

ところが札幌では就職活動に取り組む期間が短く、採用試験がすぐに始まってしまう。「これでは札幌が盛り上がっていかない。面白い人たちが活躍できるようにインターンシップや事業開発の機会を増やしたい」そんな想いを強くしました。

人のつながりを生かせるシェアハウス運営からスタート。

入社後は分譲マンションの企画・販売や、ビルをコンバージョン(用途変更)してシェアハウスやシェアオフィスにする事業を手がけました。若手を事業に抜擢してくれる会社だったので、仕事をどんどん任せてもらえました。

不動産業の川上から川下まですべてを見せてもらい、基本的なビジネスの構造を何回転か経験。そこで、「自分も何かできるのでは」という自信がつき、退職して2011年に東京で起業しました。

初めは売り上げがないうえに東京は家賃も高いので生活が厳しく、起業家仲間とシェアハウスに住んだのですが、それが良い経験になりました。それぞれが持っているコミュニティや人のつながりを介して仕事につなぐことができ、この価値観を広げたいと思って始めたのがシェアハウス事業です。

当時、札幌にシェアハウスはまだなかったため、事業は札幌でスタート。多店舗展開する中で短期滞在を望む人が増えてきたことから、宿泊施設としてゲストハウスも手掛けるように。海外にも拠点を作りましたが、新型コロナウイルスの影響で打撃を受け、残念ながら整理しました。

時代のニーズに合わせて不動産の価値を再生する事業へ転換。

コロナ禍によって、事業転換が必要になりました。それまでは宿泊事業がメインでしたが、利用客が来なくなったため施設をクローズし、社員全員で新規事業に挑戦。毎週のミーティングにそれぞれが新規事業案を持ち寄り、1〜2カ月検証してチャレンジし、3カ月後には事業撤退するか継続するかを決めていきました。

その中でうまくいったのが、不動産事業です。私に不動産事業の経験があったことと、コロナ後に不動産市場が復活した波にうまく乗れたことで、リノベーションをメインにした不動産事業が、宿泊事業よりも大きな売り上げを作れるようになりました。

不動産は息が長く、50年も使われるものなので、その間に時代やトレンドは変わっていきます。今ならインバウンドやスタートアップなどの小さな会社が増えているように、ニーズに合わせた作り変えをうまくやれば、価値を再生できる面白い事業だと思います。

起業したい・挑戦したい人が、挑戦しやすい環境づくりを。

現在、当社の事業の柱は二つ。一つが不動産事業で、自社プロジェクトとしてビルを1棟リノベーションし、コワーキングスペースなどを備えたシェアオフィス「BYYARD」の企画・開発。また、中古の戸建てやマンションを買い取り、リノベーションして販売する「札幌リノベーションスタジオ」のプロジェクトにも力を入れています。

もう一つの柱はオペレーション事業で、宿泊施設2カ所、シェアオフィス3カ所を運営しています。

当社が理念として掲げているのは、「挑戦する人を支援する。また、自らも挑戦者である」。「起業したい、挑戦したい」という人たちが、チャレンジしやすい環境をつくっていくことをビジョンとしています。

例えば「BYYARD」のような施設を造ることで、20代の起業したい人が安くオフィスを借りることができ、チャレンジしやすくなります。間貸しの飲食店を手掛けているのも、若い人たちを支援するためです。

飲食店を立ち上げるにはお金がかかりますから、設備はこちらで準備して家賃をもらう。それで事業を続けて金融機関からお金を借りられるようになれば、卒業して自分の店舗を持てるはずです。

中期的な戦略目標は「北海道No.1デベロッパー」。

現状は、不動産業の立場にいながら起業する人のチャレンジを支援していますが、それでは規模が小さいと思っています。私たちは、札幌や北海道からどんどん起業家が現れるようなインパクトを残せる会社になりたい。そのために、私たちの得意とする不動産業でしっかり稼ぎ切って、そこから起業家支援に本格的に取り組もうと考えています。

まずは2030年を目標に、年間売上高100億円を目指します。今期は10億円でしたから、事業規模を10倍にした上で、10倍、100倍と起業家支援を増やしていきたい。そうなれば、北海道全体に相当なインパクトがあるはずです。

中期的な戦略目標は、北海道No.1デベロッパーを目指すこと。その後は、コーポレート・ベンチャー・キャピタルやインキュベーションプログラムのようなものをつくり、札幌や北海道から起業する人、チャレンジする人を増やしていくことをメインにする考えです。

FULLCOMMISSIONの社長になりませんか?

起業を支援する事業を大きな規模で継続的にやっていきたいと考えた時、何十年とかかる覚悟が必要だと感じました。自分の代でやり切れることではなく、若い世代の経営者に適切に引き継いでいく会社にしなければなりません。

当社にとってのモデルとなるような企業は、適切に引き継がれることでより成長しています。面白い経営者にできるだけ早い段階でバトンタッチしていくことが、当社にとってベストだろうと経営会議で話し合い、後継者の募集を決めました。

2024年12月末までに社長候補を何人か採用し、その人材を3年間で評価させてもらって適任者に引き継ぐ。2028年には新社長体制にするというプロセスです。

後継者として求める人材は、「北海道」がテーマの会社なので、まずそこに対する思い入れがあること。また、私たちがこれまでやってきたゼロから10億円というフェーズを超え、100億円、あるいはその先を目指すわけですから、より高い視座が必要になるでしょう。

そして、できれば経営経験がある人を求めていますが、現時点では経験がなくても、私が伴走する期間に経験を積むことができます。私は代表を退きますが、何かのポジションの長として当社に残ります。経営者が1人ではなく例えば5人になるとすれば、会社としてもっと強くなるし、もっとやりたいことができる。

スタートアップが生まれる環境を作りたいという想いとともに、当社が素晴らしい会社として残っていってほしいからこそ、若くて優秀な経営者に引き継ぐべきだと思っています。これは、そのような経営の在り方があってもいいのでは、という私からの一つの提案でもあります。

編集後記

チーフコンサルタント
宮崎 美晴

今回のインタビューを通じて、山崎社長の起業への情熱と不動産事業を通じた地域活性化への想いが伝わってきました。

特に、若い起業家の支援や次世代への経営バトンタッチの考えは、地域に根ざした持続可能な発展の一端を担うものだと感じます。北海道や札幌からさらなる挑戦者が生まれる未来に期待が高まります。

経営を引き継ぐ人材を育て、北海道のNO.1デベロッパーを目指し、さらに北海道NO.1 起業支援会社を目指す同社の今後の成長がとても楽しみです。

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