企業TOPインタビュー

公共分野の国内NO.1のコンサル会社へ。

グラビス・アーキテクツ株式会社
代表取締役 古見 彰里

更新日:2024年7月17日

1977年生まれ。2001年に朝日アーサーアンダーセン株式会社(現PwC)に入社、公共機関や民間企業に向けた業務改革・デジタル化支援プロジェクトを手がける。2010年、勤務していた会社が北海道に設置したシステム開発センターの人員と仕事を引き継ぐ形で、グラビス・アーキテクツ株式会社を設立。代表取締役に就任する。2020年に大阪・福岡事務所を開設するとともに、東京・札幌の二本社制に移行。2018年から2023年まで独立行政法人国立公文書館のCIO補佐官、2019年より札幌市の市政アドバイザーを務める。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

公共に狙いを定め、元請けにこだわる。

前職のコンサルティングファームが立てた「北海道にシステム開発センターを作ろう」というプランを実行するため、私はリーダーとして札幌にやってきました。2008年に事務所を立ち上げ、スタッフ50人を抱える組織に成長したものの、経営判断でセンターを閉鎖することになってしまいます。

しかし、既に顧客の仕事も請け負い、スタッフも育っている状況で、中途で投げ出す選択はできません。そこで、スタッフと仕事を引き継ぎ、独立する形で2010年にスタートしたのが、グラビス・アーキテクツです。起業後、約1年で継続案件はすべて完了させました。

その間に自分たちのドメインを公共向けITコンサルティングに定め、以降はそこを軸に展開しています。スタートアップなので、いきなり手広くはできません。当初は中央省庁をメインターゲットにしました。初めてプライム・コントラクター、いわゆる元請けとして契約を結んだのは、2012年。経産省関連の独立行政法人(独法)である情報処理推進機構(IPA)のプロジェクトです。

IPAは情報処理の国家資格試験の実施や、ITに関する先進的な調査を行う、国のシンクタンクのような組織です。その基盤を構築するというもので、大手ITベンダーが複数社関わるようなプロジェクトだったのですが、各ベンダーを管理し、工程全体の進捗と品質に責任を持つ立場でした。

小さい会社の場合、最初は大手企業の下請けとして入るケースが多いと思います。その方が負荷は少ないので事業は安定しますが、私たちは当初から一貫して元請けとして仕事を受けることを心がけてきました。

お客さまと直接やり取りし、多くのベンダー・関係者をコントロールするというのは、確かに責任の重い役割ですが、その重さを担うからこそ、私自身もスタッフも圧倒的に早く成長できると感じています。

IT基盤構築の領域に強み。

IPAのプロジェクトを皮切りに、公共向けのIT基盤構築を徹底的に深堀りし、総務省、金融庁、人事院などの案件に関わるようになりました。今も、財務省や防衛省などのプロジェクトが進んでいます。また、省庁が所管する独法の案件にも数多く携わっており、独法のプロジェクトマネジメントに関しては、恐らくトップクラスではないでしょうか。

ITにおける基盤というのは、ネットワークやシステム、アプリを活用する土台を指します。基盤が的確に構築されていなければ、アプリにもネットワークにも支障を来します。

行政システムなので、堅牢性・セキュリティは最高度のレベルが求められる一方、さまざまなシステムやアプリと連携するため、拡張性も欠かせません。さまざまな要素のバランスを見極めながら、各省庁・独法・自治体の求める目的に適した基盤構築をマネジメントしています。

一例を挙げると、働き方改革にも直結します。在宅でリモートワークを行う場合でも、オフィスと同等のセキュリティを維持しなければなりません。そこにどういうシステムを構築する必要があるか、といったことを考える必要があります。

現在は基盤構築をベースに、その上で動かすアプリ調達をサポートするなど、派生領域にも関わっています。

公共サービスは危機的状況を迎えている。

中央省庁の実績を作ることで、地方自治体の案件を請け負うことも増えました。札幌市とは、2016年頃から取引が始まっています。その後も政令指定都市を中心に、さまざまな自治体と取引が広がり、今では当社の売上の半分は中央省庁で、残りの半分を地方自治体で占めています。

中央省庁や県、政令指定都市だとそれなりの規模の予算組みができますが、一般の自治体は予算が潤沢ではありません。予算がないからといって、いたずらに当社の単価を下げるわけにはいきませんが、作業量を見直すことでサービスを提供できるケースはあります。内容を精査し、当社はアドバイスに徹して、実際に手を動かすのは自治体の職員にお願いする、といった調整を行うことで町村などの案件にも関わっています。

地方自治体の案件は、基盤構築ではなく文書管理や財務会計、人事管理など、業務システムに関するプランニングが主になります。例えば、札幌市ではこれまで各種の請求・支払業務を各行政区の担当者が処理していました。しかし、職員が減ったため一ヶ所に集約して効率化したいというニーズがありました。そこで、私たちが業務を集約したときのフローを作り、フローに合わせたシステムを探してくる、といったお手伝いをしました。

公共の案件に長く携わってきましたが、昨今は職員不足の問題が公共の各現場で表出してきているのを感じます。団塊ジュニア世代が高齢者になる2040年~2042年くらいのタイミングで、日本の高齢者数はピークを迎えます。高齢者が増えると、介護の問題はもちろん、独居老人も増えるわけですから、地域のセーフティネットをどう構築するかといった社会問題が頻発します。それに伴い、地方自治体の仕事は爆発的に増えるでしょう。

しかし、労働者人口がますます減り、公務員数は減少しています。公共サービスへの需要はどんどん大きくなる一方で、供給力は先細りしている、ということです。このギャップを埋めるのが、私たちの役割ではないかと考えています。

目指すのは「公共の最適化」。

行政の業務を分析し、職員がなるべく身軽に、効率的に業務できるよう、あるべき姿を描く。それを実現するためのシステム構築を策定する。私たちが目指すのは、そういった「公共の最適化」です。

公共の職員は多くの仕事に従事しています。自然災害などがあると、地元だけでなく近隣からも職員が駆けつけ、徹夜で業務を行っています。しかし、その働きに応じた社会からのリスペクトが十分にあるとは言い難い印象です。公共の職員が、もっとエンゲージメントを持って仕事に取り組める環境にしていかなければ、激増する社会問題に自治体が対処できなくなってしまいます。

ですから、「公共の最適化」が必要なのです。手続き処理だけで終わる業務は極力効率化して、職員が問題解決・プロジェクトマネジメント型の業務だけに注力できるようにする。手続き処理は、AIやロボティクスなどITに任せればよい。あるいは、民間に委託するという選択肢もあるでしょう。さまざまな手段を使って、あるべき公共モデルのデザインに取り組んでいます。

2023年には、グループ会社としてパブリックタレントモビリティ株式会社を設立しました。同社は公共領域におけるデジタル人材の育成・輩出を目的としています。具体的には、公共の職員に向けたITやプロジェクトマネジメントに関する研修の実施、あるいは公共領域における問題解決型人材を育成して行政の場に送り込む、といった事業を展開します。

「公共の最適化」に注力し、いずれは公共分野における国内NO.1のコンサル会社になる。私たちは、そんな将来像を描いています。

規模は追わない。質を追求する。

「公共の最適化」を進める上で、最大の課題が人材です。人材がいれば、それだけ多くの省庁・自治体の悩みに応えられます。

公共向けITコンサルという領域で競合となるのは、大手コンサルティングファームやシンクタンク系企業です。特に、大手コンサルティングファームは、頭数を揃え、大規模なプロジェクトを丸ごと請け負う体制を整えています。

このビジネスは労働集約的なので、頭数が多いと有利な側面があるのは確かです。公共だけでなく、グローバル企業とも取引する大手コンサルファームが、顧客の求めに応じて規模を追う戦略を取るのは、無理もないでしょう。

しかし、当社は規模を追うゲームに乗るつもりはありません。規模を追いかけると、ゴールが際限なく大きくなりがちです。人材採用にあたっても、頭数の充足が第一となり、いずれ質の低下を招きます。

規模を追いかけてコンサルの質が下がるくらいなら、むしろ売上目標を下げてでも、質を維持すべき。私たちはそう考えます。これは採用においても同じ。頭数ではなく、あくまで良い人だけを厳選すると決めています。

元公務員やシステムエンジニア、大手コンサルファーム出身者が活躍。

当社にとっての「良い人材」を決める基準は、「公共の最適化」に共感してもらえるかどうか、です。「社会の諸問題に公共の立場からどう対応するか」という課題に、真剣かつ論理的に向き合おうとする姿勢を持っているか。その点を判断しています。

そのためには、哲学や歴史学といったリベラルアーツのような教養も必要ではないかと思います。公共の現状や原因を分析するには、MBA的手法だけではどうにもなりません。リベラルアーツをベースとした人間社会に対する洞察を根底に持ち、「社会をよくしたい」という思いを持って仕事に取り組める人の方が、やりがいを感じられるでしょう。

そういった仕事のせいか、当社には前職が公務員だった社員も結構います。もともと「地域のために何かしたい」と志を抱いて公務員になった人たちなので、当社と親和性があるのだと思います。また、システムエンジニアや大手コンサルファームからの転職組も多く、「規模的・物質的な成果とは異なる価値を求めたい」という人がやってきて、いきいきと働いています。

当社は、規模の面でいえば大手コンサルファームと比べるべくもありません。しかし、高利益率を維持し続けていますし、その実績を還元しているので、待遇面では大手に引けを取りません。それは、より良い社会を作るために努力している社員に対し、会社が果たすべき最低限の義務です。

一緒に、公共の最適化をデザインしませんか。社会問題解決のための仕組みづくりをサポートする、という意義の大きいプロジェクトに取り組みましょう。

編集後記

コンサルタント
荻野 智史

「公共社会の最適化」という明確な理念を掲げ、揺るぎない信念に基づいて事業を推進している点が印象的な同社。

古見社長は、「売上や事業拡大を目的とするゲームには参加しない」「お客さまの本質的な課題解決に全力で取り組む」とにこやかに語ります。この言葉には、同社の強い意志と顧客への真摯な姿勢が込められています。

札幌市の市政アドバイザーを務めることや、理念に共感できる人材のみを採用するという方針も、コンセプトを体現した取り組みといえるでしょう。

そうした仕事を積み重ねていくことで、公共分野の国内NO.1コンサル会社を目指す同社の今後のさらなる成長がとても楽しみです。

関連情報

グラビス・アーキテクツ株式会社 求人情報

企業TOPインタビュー一覧

ページトップへ戻る