お得に良質を。お客様の笑顔を大事にする「不動産サービス業」。
株式会社日動
代表取締役 前川 大輔
1976年生まれ。1999年に日動に入社。2003年、日動サービス(株)常務に就任。2005年、(株)日動の常務を経て、2007年、(株)日動の社長に就任。北海道住宅都市開発協会常務理事。日本マンスリーマンション協会理事。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
分譲マンションを始め、賃貸、不動産管理、ホテルなど幅広く展開。
1977年に創業した日動の事業は、大きく3つに分かれます。一つめは、分譲マンション事業。自社ブランドの「ラ・クラッセ」シリーズを年2棟ペースで供給し、どれも即完売する知名度の高いマンションとなっています。「都心部の良い立地に、より良いものを、より安く」をコンセプトにしているため、世代を問わず道内外の多くのお客さまに支持されています。
二つめは、賃貸事業です。賃貸にはいろんな領域があり、一般的な大家業や賃貸物件の斡旋・仲介も行っていますが、家具・家電付きのマンスリーマンションも200室以上、また、サービス付き高齢者賃貸住宅の運営なども手掛けています。そして、現在は賃貸事業の一領域ですが、1泊2日の通常の宿泊だけでなく、マンションデベロッパーならではの、キッチンや洗濯機などを常備した長期滞在型の部屋も設けるなど、あらゆるニーズに対応するハイブリッドホテル「クラッセステイ」も展開しています。今後は、このクラッセステイを新たな柱にすべく、事業展開を模索しています。
三つめは、不動産管理事業です。この分野も裾野が広く、完成後の分譲マンション管理はもちろん、賃貸マンションオーナーの依頼により管理業務を受託したり、北海道や道内市町村の指定管理者として公営住宅の管理も行っています。他にも、病院や高齢者施設の管理も請け負っており、管理戸数は現在1万戸に迫る勢いで拡大しています。また、管理業務に付随する建物・設備のメンテナンス・修理やリフォームといったニーズにも、社内の組織で対応しています。
このように、私たちは不動産に軸足を置きつつ、多様なサービスをお客さまに提供する「不動産サービス業」です。
リーマンショックの厳しい市況の中、自社の存在意義を全員で共有。
私が父の後を継ぎ、日動の社長に就任したのは2007年。その後、すぐリーマンショックが起こり、当社も厳しいビジネス環境に置かれました。この間、私は以下の二つに注力しました。
一つは理念の徹底です。一度原点に立ち返るべく、自社の存在意義は何か、従業員全員で共有しようと考えたのです。自らの立ち位置が明確でなければ、お客さまの期待に応えられる価値は提供できません。そして、自分たちの理念は「たくさんの方々の笑顔を生み出すこと」と確認し合いました。
もう一つが、事業の幅を横に広げ、独自のビジネスモデルの仕組みを創りにいったことです。お客さまを笑顔にするため、できることは貪欲に取り組もうと考えたのです。中でも注力したのが、いずれの事業においても「お得感」をお客さまに味わってもらうことです。
例えば、分譲マンション事業で言えば「良い立地に、良いマンションを、よりお得な価格で」お届けする仕組み創りにこだわりました。約20年前、マンションと言えば3~4LDK以上が主流でした。しかしその頃から、当社は1~2LDKのコンパクトタイプのマンションを手掛けていました。
当時、こういったマンションをメインに打ち出していた会社はほとんどなく、ニッチな領域だったのです。この仕組みをさらに研ぎ澄まし、マンスリーマンション事業やホテル事業含め、7つの事業を立ち上げていきました。
「お得感」「ニッチ」にこだわり、事業の幅を横に広げた。
努力が評価され、2009年にリブランドして販売を開始したラ・クラッセは、2ヶ月ほどで完売。リーマンショックの影響を受け、全国的にマンション供給戸数自体が激減した頃、たった2ヶ月で完売するマンションがあるのかと、業界では全国的に注目が集まったほどです。
現在も、ラ・クラッセを求めるお客さまは、道内外から来られます、大半が投資目的でなく、実際に自身で住むためのお客さまです。核家族化・居住人員の減少という時代の流れが、都心部コンパクトマンションにうまくマッチしたのでしょう。不動産管理事業でも、さまざまな業務の内製化を進め、管理委託費を安くできるモデルを考えました。
また、ホテル事業で長期滞在型に着目したのは、オペレーションコストを低く抑えられる分、お得な価格で提供できるからです。リゾート地にコンドミニアムはあっても、都心にはありません。ニッチ領域だったので、独自性が発揮できるとも思いました。
お得であること、そしてニッチであること。この二つを軸に、事業の横展開を図りました。その結果、お客さまの笑顔が増え、豊かな暮らしの実現に貢献できるようになりました。私が社長に就任し、リーマンショックを乗り越え、事業を拡大してきたこの十数年は、第二創業期といえるでしょう。既成概念にとらわれず、お客さまの側に立ったサービスを実現してきたことが、よい成果をもたらしたと考えています。
これから第三創業期。各事業をいっそう進化させる。
これから、第三創業期のスタートです。横に広げてきた事業を、今後は縦に伸ばしていきます。各事業で築かれた足場を基盤に、大きな伸びの見込める領域に経営資源を集中しようとしています。コンセプトは「人創り、事業創り」です。
事業の指標として重視するのは、お客さまの数です。売上も大事ですが、私たちの理念は「お客さまの笑顔を増やすこと」です。笑顔の数が増えなければ、当社にとって成長ではありません。そのためには、チームワークがこれまで以上に重要になってくるでしょう。業界の中には、有能な営業マンがどんどん売って事業を支えることを良しとする会社もあります。
しかし、私はそうは思いません。属人的な資質に依存するのではなく、従業員のスキルを標準化する。誰がどのお客さまを対応する場合でも、最大限のパフォーマンスを発揮できるようにする。そうでなければ事業の発展は望めません。そして、そのためにチームワークが大切なのです。
第三創業期は、北海道外に進出する可能性もあります。よりお客さまの笑顔やお得感を最大限にしていくには、シェア拡大も必要と考えているからです。
古い枠組みにとらわれない素直な心と、外に目を向ける姿勢。
当社は、「お客さまの笑顔」を生むため、「お得感」にこだわって事業を展開しています。お得感を創出するには、既存の枠組みに疑問を持ち、改善・改革することが大事です。ニッチ領域で事業が育ったのも、従来にない発想でサービスを変化させていったからです。
こういった変化を起こせるのは、物事に対して素直な心で取り組むことができる人ではないかと思います。古い手法にとらわれ、行動する前から「そんなことは無理だ」と言っていたら、変化は起こせません。しかし、素直な人は「まずやってみよう」と前向きになれます。その純粋な行動力が、第三創業期を迎えた当社に必要なのです。
それに加えて、社外に目を向けられる人材ですね。働いていると「社内の評価が気になる」という人は結構いるでしょう。しかし、事業を成長させるヒントは、常に社外にあります。お客さまを笑顔にしようと思えば、お客さまを知るしかありません。お客さまに喜ぶサービスを提供できて初めて、評価も上がっていくのです。素直な心、社外に目を向ける姿勢。これらの要素があれば、十分当社でがんばっていけます。
私も経営者となり、多くの失敗を重ねてきました。だからこそ、今までのやり方ではダメだ、当社ならではの価値提供をしないといけない、ということに気づけたのです。大変革の時代を乗り越え、数々の事業を拡大できたのは、失敗から学び変化することができたからです。当社は、今後もお客さまの笑顔を大切に、変化を恐れず、私たちにしかできない価値を追求していきます。