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北海道の持続的発展に寄与するさまざまな調査研究・分析を提供。

株式会社北海道二十一世紀総合研究所
代表取締役社長 藤池 英樹

更新日:2023年1月11日

1982年北海道大学を卒業後、北海道拓殖銀行に入行。1998年に(株)北洋銀行に籍を移し、人事部担当部長、法務コンプライアンス部長、常務執行役員、取締役などを歴任。その後、北洋銀行の子会社を経て、2021年、北海道二十一世紀総合研究所に入社。代表取締役社長に就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

官公庁などの依頼を受け、諸問題の調査研究を行うシンクタンク。

北海道二十一世紀総合研究所は、さまざまな顧客から依頼を受け、課題の本質を数値化して分析し、政策立案や解決への提言を行うシンクタンクです。事業は「調査研究」「調査」「経営コンサルティング」の3つに分かれています。

「調査研究」では、主に官公庁から課題をもらい、調査研究を行ってレポートを提出します。官公庁は、レポートの示すデータや関係者の意見などを参考に、解決策を推進していくのです。要望されるテーマは、高齢化、人口減、介護、ヘルスケア、観光、食産業、デジタル化、起業・スタートアップ支援など、多岐にわたります。当社の中核ともいえる部門で、売上の7割を占めます。

「調査」では、株主でもある北洋銀行の依頼により、北海道の景気動向調査を行ってレポートにまとめています。道内のマクロ経済調査などを実施し、道内企業の発展に寄与します。

「経営コンサルティング」では、北洋銀行の顧客を中心に1,200社が加盟する「北洋ビジネスクラブ」を運営し、講演会やセミナーの講師派遣を行ったり、企業の要望に応じてコンサルタントを派遣したりします。

高齢化、食、観光など多岐にわたる課題に対応。

「調査研究」の課題には、さまざまなものがあります。例えば、高齢化が進む北海道では、高齢者の健康維持や健康促進に関わる施策を推進しなければなりません。そこで、私たちが調査を実施し、高齢者の考えや、健康指導にデジタル技術を適用した場合の反応などを汲み取り、研究成果として提出します。それが施策の基になるわけです。

食の輸出というテーマもあります。国全体で食の輸出を増やそうと躍起になっていますが、「北海道産」はブランド力があり、海外でもよく売れます。しかし、ブランド頼みで一時的に売れても、海外の人々が日常的に買う商品とならなければ、長続きしません。

そのためには、適正価格があります。スタートアップ時点では行政が補助金をつけて価格を抑え、海外で買ってもらえたとしても、補助金がなくなり各事業者の自走段階に入った時、価格が上がったので売れなくなった、これでは意味がないのです。こうした問題に対し、長く続くビジネスになるよう、さまざまな角度から調査研究を行い、自走の実現に役立ててもらうのです。

食に関しては、水産物は冷凍などの工夫ができますが、農産物は悩みが大きいですね。輸送量などのコストが乗ると、やはり高値になってしまう。事業者も行政も頭を抱えるところですが、私たちもシンクタンクとして、クライアントの意欲に伴走していきたいと思います。

観光のテーマもありますね。食も同じですが、コロナ禍でダメージを受けたところに、どうやって観光客を呼び込むか。入国制限が解除された後、特に海外の人にどのように注目してもらうか。それらのテーマを多角的に調査します。

デジタル化、SDGs、脱炭素、複合的視点で分析を行う。

デジタル化に関する課題も増えています。もちろん技術面についてはあれこれ言えませんが、デジタル化が及ぼす影響の調査研究はできます。

例えば、鉄道が廃止され、代わりにAIによる自動運転のバスが町内を回ることになった場合、町民のみなさんは、自動運転バスを利用してくれるでしょうか。

もし「自動運転なんて不安だから、自分は車を運転する」という人が増えたら、自動運転バスを用意するコストが無駄になります。そこで、町民は自動運転バスについてどう考えるか、利用する人、拒絶する人はどの程度になるか、といった点を調査・分析するのです。

今はSDGs、脱炭素、再生エネルギーをテーマとする依頼も多いですね。総論では誰も反対しないのだけど、いざ自分の町に風力発電を作ろうとなると、騒音などを気にする人が出てきて、話が前に進まなくなったりしますから。

各職場で外国人・女性・高齢者にどのように活躍してもらうか、という労働問題は、もう待ったなしでしょう。高齢者に長く元気に働いてもらうためにも、健康維持・管理の施策は欠かせません。

一方で、少子化問題も進行しています。このあたりの問題は、個別ではなく、複合的に捉える視点が必要だと思います。

「デスクワーク中心」ではない。コミュニケーション能力が大事。

調査研究は「デスクワーク中心」と思うかもしれませんが、意外とそうではありません。私たちも文献・過去資料調査などは行いますが、現代ではインターネットが発達しているため、これらは依頼者もやろうと思えばできてしまいます。同じことをやっていては、シンクタンクとはいえません。

大事なのは、行政のニーズを把握して先読みしながら、住民や企業にどう展開していくか、ということです。私たちは、直接の利害関係者となる地域の方々の声を聞くため、アンケートを実施したり、インタビューを行ったりしています。景気動向調査を行うなら、道内企業数百社に景気の話を聞かなければ、動向は見えません。

アンケートも慎重に行う必要があります。ヒアリング項目をどのように設定するか吟味し、想像以上に足を使って、地域住民や企業関係者とのコミュニケーションを取っているのです。将来予測は、地道な情報収集があって初めて成立するものです。

「行政のニーズを把握」することは大切ですが、それは「行政の言いなりで動く」ことではありません。私たちの役割は、行政が立てた仮説の正しさを証明することではないのです。正しい場合もあるかもしれませんが、逆になるかもしれない。あくまでニュートラルな立場で、住民や企業の声を忠実に反映する。それが、私たちに期待されている務めです。だからこそ、アンケート項目の設定などが重要になってくるのです。

一つの事例ですが、過疎地のワーケーション活用を志向する自治体は少なくありません。そのための調査依頼もいくつかあります。北海道に移住して仕事はテレワークで、という話は一見魅力的ですが、そうは問屋が卸しません。ワーケーションに強いのは山梨や静岡など、東京に2時間弱で行ける地域で、北海道は選択肢に入っていません。

道内自治体が目を塞ぎたくなるであろうこの事実を直視しなければ、未来につながる調査研究はできません。だから、私たちはワーケーション・過疎地活用に関するイベントにもたびたび足を運びますし、本州企業向けの売り込み展示会などがあれば参加します。「行政のニーズを把握して先読みする」というのは、そういうことです。

「営業が苦手だからシンクタンクへ・・・」という転身はうまくいかない。

当社で活躍できるのは、北海道を良くしたいと願い、具体的に行動できる人でしょう。「営業が嫌だから、学術的なシンクタンクに入りたい」では、うまくいかないかもしれません。すでに述べた通り、調査は足も使うし、インタビューの中で真意を捉えるコミュニケーション能力が求められますから。

実際、当社では多くの中途転職者が活躍していますが、前職はさまざまな経験を積んだ人ばかりです。大学の学長経験者や官庁の関連部署、東証一部上場企業、大手ディベロッパーに勤務していたOBといった方を研究員として招き、ノウハウを発揮してもらっていますが、学者肌の人は多くありません。言い換えると、北海道の発展に強い興味のある方なら、専門スキルがなくとも大歓迎です。

AIやDXに関心の高い方も必要だと感じています。技術の経験はなくとも、DXで何ができるのか、どう活用すれば省力化・生産性アップに貢献できるのかわかる方です。DXが流行っているので着手したものの、仕事は減らず、継続もできていない。そういった組織に、関係者の意向を調査しながら提言を行う業務は、今後ますます増えていくと思います。

北海道に課題は山積しています。私たちは、今後も地域に根ざした調査研究業務を続け、どうすれば地域の発展と持続性に寄与できるかを考えていきます。ぜひ一緒にやりましょう。

編集後記

チーフコンサルタント
宮崎 美晴

北海道二十一世紀総合研究所は、北海道では数少ないシンクタンクです。北海道は、国内でも特に少子高齢化の進行や、交通インフラの縮小といった課題が深刻な地域の一つです。

また、多くの企業が国内外からの観光客に関連する事業を手掛けているため、パンデミックの影響を大きく受けているなど、藤池さんのお話にあった通り、課題が山積していることは一住民としても実感しています。

「シンクタンクの研究員」というと学術的なイメージもありますが、今回お話を伺い、永続的な地域の発展に向けて、地域課題の入口から明らかにして策を練っていく、課題解決の現場の最前線にいる方々、と感じました。

どの企業にもいえることですが、住みよい北海道のために日々努力されていることに感謝します。

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