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スポーツの可能性を最大限に広げ、地域と企業の課題を解決する。

株式会社レバンガ北海道
代表取締役CEO 横田 陽

更新日:2022年10月19日

北海道釧路市出身。札幌大学でバスケットボール選手として活躍。大学卒業後、当時の月寒グリーンドームの運営会社へ入社、その後、2007年にレラカムイ北海道のチーム設立に尽力。一度、チーム運営から離れるも、2014年4月に改めてレバンガ北海道に参画。現在は代表取締役CEOとして会社の経営を担う。
※所属・役職等は取材時点のものとなります。

課題を聞き出し、解決策を提示する“町医者”のような営業。

当社は、プロバスケットボールチーム「レバンガ北海道」の運営会社です。最近は6期連続で黒字を達成し、前期はクラブ創立初の年間売上10億円を達成するなど、業績は順調に推移しています。

コロナ禍でリーグ中断といった逆境がありながら増収できたのは、中長期を見据えた地道な営業活動を継続できていたおかげであり、パートナー企業様のチームへの想いがあったからこそ、コロナ禍でもスポンサーを減らさず、逆に増やすことができたと思っています。

プロスポーツの営業というと、いくつかのパートナープランがあってそこからお選びいただくようなイメージが一般的かもしれませんが、当社の営業活動は多少異なります。お客さまである企業の経営課題や業界の問題などの現状把握をし、それを解決するために当社ができる最適なソリューションを提案する。町のお医者さんが行う問診医療に近い形の営業を心がけております。

なので、セールスシートによる汎用性のある営業の他に、カスタマイズやオーダーメイドなど企業に寄り添った提案営業を行っております。

リーグ優勝がゴールではない。目的は「人と社会に感動を届ける」こと。

スポーツの持つ可能性はとても幅広くて、エンターテインメントだけでなく、教育、健康、福祉、医療、観光、経済などあらゆる業種・業界に貢献できるコンテンツであると考えています。

一般企業でありながら、スポーツという価値を様々なニーズにアレンジすることで、自社の利益のためだけでなく、地域や社会課題などに活用させていただく。この活動こそがプロスポーツチームの存在意義であり、本活動を通してパプリックな存在として扱っていただけると思っています。

今、多くの企業がSDGsやESGといった社会活動を意識されていますが、どのように着手したらいいかお困りの企業も少なくありません。そういった企業の皆様に、スポーツ振興や体力づくりのプログラム開発、シニア向け健康講座、サスティナブルな環境活動といった、当社がこれまで継続して進めてきた活動にご一緒いただくことで、さらに当該活動の幅が拡がります。

少しでも多くの方々に喜んでいただくことで、さらにパートナー企業は社会に貢献できる。そういった、自分たちも含めたAll-Winのストーリーを作っていくことを重要視していて、それもまたプロスポーツチームの存在意義であると考えています。

しっかりとビジネスとして稼ぐという本分はありながらも、北海道のため、地域社会のためというのが大切で、自社のコンテンツである「スポーツ」を活用して一般企業と地域社会のハブになれると考えています。

所属する選手たちにも「リーグで優勝する」とか「日本代表選手に選出される」といったチームのミッションや目標はとても大事であるというは当然のことながら、クラブのゴールは、そういったミッションを遂行することで、より“北海道から「⼈」に「社会」に感動を届け、世の中を笑顔にする”という理念が実現できるのだと伝えています。

プロアスリートにとってコート上のパフォーマンスは、最低限であり、仕事の半分に過ぎません。残りの半分はオフコートで、地域のため、子どもたちのために活動することです。

現在、当社のスポンサーは約400社。ほとんどが北海道内の中小企業です。レバンガ北海道は私たちの所有物ではなく、応援くださっている皆様の球団だということを忘れてはいけません。

今季から、現役のフィリピン代表選手とアジア枠の制度を活用し契約を締結しました。もちろん戦力強化のためでもあるのですが、リーグのアジア枠の趣旨はそれだけではなく、マーケティング目線での導入でもあります。

フィリピンは人口1億人を抱える発展途上の国で、さらなる成長が見込まれる中、フィリピン代表選手が札幌で活躍したり、現地の観光PRなどに登場すれば、フィリピンからの観光客が増えるかもしれないし、国際交流や経済交流の一助になれるかもしれない。そういった活動こそが地元北海道に貢献できるかもしれない。

レバンガ北海道の可能性として、観光や国際交流の起点にもなり得る実績がつくれれば、北海道内各地の皆様にも必要だと思ってもらえることに繋がっていくと信じています。

様々な課題解決に関わりたい。

2022年からはこのコロナ禍で進めていた各自治体との取り組みがスタートしております。札幌市をはじめとする近郊自治体との連携協定も随時進行中であり、各自治体様とも連携強化ができることで活動の幅が格段に広くなっています。スポーツ関連の部局だけでなく、保健福祉局やこども未来局、まちづくり局、消防局など、様々な部門との繋がりができやすくなり、サイバーセキュリティのアンバサダーとして任命されるなど、徐々に実績も出てきています。

教育面でもできることがあります。当社はeスポーツ業界にも2018年から参入しており、当時はゲーム業界のことは無知でしたが、選手の価値を高め、ブランディングやマーケティング、PRやグッズ販売など、内的アセットを流用できるという判断もあり決断しました。

やってみると、リアルスポーツではボールを持つが、eスポーツではコントローラーを持つ、程度の違いしかないことがわかりました。実際、eスポーツを通じてバスケのレバンガを知ったというゲームユーザーもいますし、逆パターンもあります。

eスポーツとリアルの両方を運営している、という長所を生かし、今後はゲームを活用した健康寿命やコミュニケーションツール、脳トレーニングなど、「競って賞金を稼ぐ」というeスポーツの偏ったイメージの払拭をしながら、まずは道内各地で様々な活用方法や可能性があることを伝えていきたいと思いますし、幅広い業界ともご一緒できる領域であると考えています。

アリーナは、一体経営によって価値が高まる

2026年に始まる新B1リーグ(ライセンス基準を満たしたクラブによるトップカテゴリー)の参入条件の一つとして、夢のアリーナ構想というものがあります。カーディング(試合編成)の自由度のほか、スイートルームやVIPラウンジなど、海外のアリーナのようなエンタメ性の高いソフト要件がいくつもあり、新設もしくは改修いずれかで実現していかなければなりません。

アリーナを建設する場合、それが街全体を活性化し、将来においても街のシンボリックな存在であるべきで、収益性を高めていくことはもちろんですが、「地域にコネクトし、還元する」という発想が必要と考えます。

収益性を考える上で重要なのは、コンテンツです。アリーナを作っただけでは、鉄の塊に過ぎず、コンテンツを生み出すとともに、既存のコンテンツのバリューを高めていくことこそが、アリーナの発展につながります。コンテンツに対するブランディングや成長速度を高めることでセールス単価やチケット単価が上がり、付帯する設備やサービス向上につながります。

レバンガ北海道がアリーナスポーツにおけるコンテンツとしてプレゼンスを高めていくことがアリーナ運営にとっても有効であると思います。しっかりと価値を高めるためにもハードとソフトの一体経営というところの実現に向けてもチャレンジしていきたいと思いますし、そうすることが必然であると考えています。

そういったアリーナが北海道にできることで、これまで関東で止まっていた世界的なショーやライブエンタテインメントの招致や、ナイトエコノミーにも様々なコンテンツを提供できるかもしれません。

北海道はプロアマ含めてたくさんの競技が存在しており、1年通じて様々なスポーツを観戦できる文化が醸成されている地域かと思います。先般北海道コンサドーレ札幌とも協業提携をし、スポーツを通したまちづくりや、子どもの体力向上など、様々なシーンで協業していきながら北海道の皆さんのお役に立てればと思っております。

10億円の大台をクリアした先に掲げるのは、3年後の20億円です。その準備はしてきました。スポーツを軸とした、様々な分野との連携。地域の人々や企業の抱える課題を解決するソリューション提案。またeスポーツとの連携や、フード事業(小樽名物の若鶏半身揚け販売)といった、事業の多角化も進めています。多くの人に感動と笑顔を届けるという理念を見失わず実績を積み重ねていけば、不可能な数字ではありません。

前回と同じことをやる。それは思考停止でしかない。

エンタメ業界は、今日は面白かったとしても明日には飽きられてしまう、という宿命を持った業界です。SNSツールやアプリなど時代の変化が著しい中で、スポーツ興行における「昨年のイベントでヒットしたから今年も同じことを…」というのは、当社にとっては思考停止でしかありません。

我々バスケットボールの試合は約2時間であり、前後の時間を換算すると、ちょうど映画と同じような拘束時間となります。ただ、映画は筋書きがあって結末が決まっていますが、私たちのビジネスは一方的な勝利というハッピーエンドの結末だけではなく、期待に応えられない結果の時もあります。

つまり自分達ではコントロールできない商品ということになるため、一つの試合を実施するために何日も前から準備して、映像や照明、音響、チア、ギブアウェイや参加型イベントなどなど綿密に打ち合わせて空間を作り上げる。仮に勝利をお届けできなくても、「試合」という商品以外のコンテンツを高めていくことが「勝っても負けても“また来たい”と思ってもらえることにつながっていくと思っています。

「面白かった!」「また来るわ」などと声をかけていただけたり、SNSでポジティブなコメントを拝見すると、苦労が報われたように感じます。さらに喜んでいただくには何が必要か、というマインドを持って取り組める人には、やりがいのある仕事でしょう。

ですから、チャレンジは歓迎します。チャレンジし過ぎて時に炎上することもありますが、初めてやることには批判も大きくなります。楽なのは現状維持であり、何もしない、ということなのでしょうが、それは思考停止であり衰退につながります。常にチャレンジングで尖っていれば、それがブランドになります。

「普通こうですよね」「常識的には…」といった考えに囚われていると、真の解決策は見えてきません。本質は”感情を揺さぶるようなものかどうか”を軸に判断していくことを大切にしています。

みんなに感動を届けて笑顔になってもらうことは簡単ではありませんが、スポーツはあらゆる感情を揺さぶります。その感情をプラスに働かせる形を創っていくことが大事で、そういう概念に共鳴できる人は、意欲を持って続けることができると思います。

編集後記

コンサルタント
新井 太樹

「リーグ優勝をすることがゴールではなく、“北海道から「⼈」に「社会」に感動を届け、世の中を笑顔にすること”が目指すべき姿」と横田CEOがおっしゃられているのがとても印象的でした。勝ち負けに関係なく、また来たいと思ってもらえる存在であるために、スポーツの可能性を追求し、企業と地域も含めたAll-Winの社会の実現を目指すというワクワクする内容でした。掲げている目標も高く、見られている未来もずっと先にあると感じ、今後の発展が非常に楽しみです。

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