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投資ビジネスを通じて北海道から世界へ羽ばたく企業を育てる。

北海道ベンチャーキャピタル株式会社
代表取締役 浦田 祥範

更新日:2022年10月26日

1961年生まれ、幕別町出身。慶應義塾大学を卒業後、株式会社北海道銀行に入行。同行経営企画部長、株式会社道銀地域総合研究所の取締役常務執行役員を経て、2018年に銀行を退職し、浦田コンサルティングオフィスを開設。2019年から現職。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

ベンチャーの成長ステージに応じた投資ニーズに応える。

1999年の設立以来、北海道におけるベンチャー企業のスタートアップや事業成長の支援を行ってきたのが、私たち北海道ベンチャーキャピタルです。

運営ファンドは現在6本。投資先はアグリビジネスやライフサイエンス、観光関連など多岐にわたりますが、昨今多くなっているのはICT分野のDXやAIに関する事業ですね。

コロナ禍により、テレワークや巣ごもり消費といった、インターネットでの行動が活発化してきました。その状況を重視し、次の打ち手に活かしたいと考える企業が増えたからでしょう。

ベンチャー支援に加え、事業承継・事業再生に関するニーズも増えています。その声に応えるため、2022年1月に立ち上げたのが「ほっかいどう事業承継ファンド」です。これは、オーナーと相談して定めた方針に沿って、資金提供や経営人材の派遣、組織型経営などの整備を行い、スムーズな事業承継を行うことを目的としています。

事業には、成長ステージに応じた投資ニーズがあります。そうしたさまざまなニーズにも幅広く応えることで、最終的には北海道地域の発展に貢献しようというのが、私たちのミッションです。

北海道に根を張り、20年以上にわたって地域を支援。

当社の事業は、地域活性化など何らかの目的を持ったファンドを組成し、出資者を募るところから始まります。集まった資金を元に私たちがファンドを運営し、個別企業を支援します。そして、企業がIPOなどによって価値を高めることができたら、収益を投資家にお返しし、一部を成功報酬として受け取る、というのが当社のビジネスモデルです。

IPOだけが最終的なイグジットではありません。例えば、利益率を高めて持続成長の基盤を整えたり、M&Aで事業売却するなど、複数の選択肢がある場合もあります。私たちが勝手にイグジットを決めて運営するわけではありません。もっとも重要なのは、オーナー経営者の意向です。

例えば、事業承継案件の場合、オーナーと議論を重ね、最善のイグジットの形を模索します。オーナーが「会社は従業員に譲りたい」と考えるなら、私たちも意向を最大限尊重し、経営環境の整備を支援します。

投資事業を展開する企業は全国に多数ありますが、これらと当社の最大の違いは、北海道にどっしり根を張り、北海道全域に目を向ける、唯一に近い存在である、という点でしょう。

大手ベンチャーキャピタルにとっては、札幌ですらローカルな市場であり、道内のその他地域となると、投資に見合うリターンは到底期待できないと考えてしまいがちです。しかし、北海道の隅々まで詳しく知る私たちは、道内のさまざまな地域に可能性が眠っていることを知っています。それは、私たちが20年以上、北海道に根ざした活動を行っているからです。

北海道銀行とも連携しており、当社運営ファンドへの出資も行ってもらっています。地元に根ざした金融を展開する道銀は、北海道地域に広くネットワークを張り巡らせています。このネットワークを活用させてもらえる点も、有望企業の発展に一役買っています。

単なるアドバイザーではない。経営のパートナー。

私たちが「企業価値」というとき、財務諸表の数字だけを見るわけではありません。類似企業と比較して、どのような優位性があるか。将来的にどういった魅力を打ち出せるか、といった点に注目します。そのために事業内容の組み換えを提言する場合もあります。

企業価値の最大化を図り、経営者にも投資家にも、そして従業員にも最善のリターンを返すには、表面的な事象を捉えてアドバイスするだけでは到底足りません。時に経営者の右腕となって行動することもあります。

当社は投資先の役員会に直接出席し、時に経営者と対等に発言する場合もあります。財務に関することは言うまでもなく、成長施策や人事など、投資先の経営に関するあらゆる資料に目を通すこともあります。ここまで資料を開示してもらい、経営者と丁々発止で意見交換できるのは、私たちが通常の金融機関ではなく「ファンド」だからです。

自分たちだけで解決が難しい場合、外部の専門家を頼る必要があります。しかし、誰のどういった知識が課題解決に結びつくか、判断も容易ではありません。また、投資案件がうまくいくとは限りません。基盤の脆弱なベンチャー企業が、厳しい局面に陥るのはよくあることです。関係が浅ければ、そこで手を引くこともできるでしょう。

しかし、地域に根付いた私たちはそうはいきません。状況を打開する方策を粘り強く模索して、窮地をしのぎ、道を切り開いていく。そういった「しぶとさ」も必要になります。

そこまでやって初めて、経営者が心から信頼してくれるようになるのです。そういった関係を形成し、力を合わせて事業成長、IPO、あるいは事業承継という目標のために行動できるのが、北海道ベンチャーキャピタルの最大の強みであり、仕事の醍醐味です。

可能性あふれる北海道から、今後も多くのベンチャーが芽吹く。

北海道は、可能性に溢れた地域です。アグリ分野でいうと、従来は作れなかった作物を作ることができるようになり、今や北海道がワイン生産の最適地などといわれたりもします。広大な土地の存在は、それだけでメリットです。これはもちろん、アグリ分野に限った話ではありません。

地理的な面から見ると、「北極海航路」が運用されるようになれば、ヨーロッパともっとも近い国内の地域は北海道になります。北米と結ぶ航路も、北海道からなら数日早く船便が着きます。すなわち、物流の要衝にもなるでしょう。

観光や移住先としての北海道の注目度は、いまさら言うまでもありませんし、その魅力はまだまだブラッシュアップできます。このような地域からは、今後も多くのベンチャーが誕生すると思います。

昨今は、SDGsやESG(Environment, Social, Governance)に意識を向けた経営といった観点での起業や新規事業も活発化しています。投資家の側も、SDGsやESGを重視するようになっています。

短期的な利益創出に結びつくものではありませんが、その存在感はどんどん大きくなっていくでしょう。こうしたさまざまな声に、私たちは着実に応えるファンドであり続けたいと考えています。

重要なのは、経営者と信頼関係を築けるコミュニケーション能力。

当社のファンドビジネスに携わるには、さまざまな能力が必要です。しかし、スキルそのものは入社してから習得できます。経営管理についても、基本知識は本で学べますが、実践で役立つスキルは現場経験を通してしか身につきません。

もっとも大切なのは、コミュニケーション能力です。起業家や投資家、従業員、外部の専門家など、さまざまな利害関係者と話し、調整する。相手の話をしっかり聞き、思考をまとめ、方針を定め、わかりやすく伝える能力は不可欠です。

ファンドビジネスのリスクを的確に管理するには、企業の現状と将来性をギリギリまで見極めなければなりません。それらの判断材料も、コミュニケーションによって生み出されるものです。

経営者と議論を繰り返し、信頼関係を醸成することでしか、精度の高い情報は得られません。コミュニケーション能力があり、北海道を愛する気持ちを持つ。そんな方々に期待したいですね。

私たちが投資案件を検討する際、リターンだけで判断することは、まずありません。リターンは大事ですが、それが当社のビジネスの目的ではありません。より重要なのは、世の中の課題解決に資するかどうか、です。

この事業によって、日常の利便性が向上する、地域活性化につながる。あるいは創薬によって、不治と言われていた病が不治でなくなる。経営者の「社会の役に立ちたい」という思いが強ければ強いほど、事業の成功確率はあがります。その思いを見極め、課題解決の道筋を整備するのが、私たちの役割です。

北海道の発展、地域活性化のために、一緒にがんばりましょう。

編集後記

チーフコンサルタント
宮崎 美晴

浦田社長の「北海道は、可能性に溢れた地域です」という一言がとても印象的なインタビューでした。企業に投資をする、ファンドを組成して出資者を募る、という点のみに注目すると、首都圏や海外など北海道ではない地域に目が向くのは普通のことです。

その中で、北海道ベンチャーキャピタルだからこその視野・密度で地域に目を向け、食、農、ITなど北海道らしい視点から地域のポテンシャルに光を当て、ビジネスを生み出すことは、この会社にしかできないと感じます。今後の活躍が大変楽しみな会社です。

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