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積極的M&Aで殻を破り続け、600店・1300億円の企業体に成長。

株式会社オカモトホールディングス
代表取締役/オカモトグループCEO 岡本 謙一

更新日:2022年9月21日

1946年、北海道士幌町出身。大学卒業後、1983年に社長に就任。以降スイミングスクール、レンタル事業、飲食事業と業種を拡げ、コングロマリット経営を進めている。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

GS、フィットネス、リユース、官民連携など、18業種39業態を展開。

オカモトグループは北海道帯広市に本社を置き、18業種39業態を手掛けるコングロマリット企業体です。本社機能のオカモトホールディングスを中心に7社でグループを形成。各会社に事業を執行するカンパニーが存在し、自律的に事業推進しています。

積極的なM&Aによって事業規模を拡大させ、今日では北海道をはじめ東京、香川、石川に進出。直営・FC店合計で600店舗以上に成長し、グループ売上は1300億円を超えます。

事業は、ガソリンスタンド、カーメンテナンス、フィットネス、介護、リユース、エンタメ、外食など多種多彩。個人を対象とするBtoCビジネスが主ではあるものの、最近は法人対象のBtoBも増えてきました。

多角化の原点は、1984年の帯広スイミングスクール設立です。石油業界の規制の多さに打開策を練っていた頃、ある新聞が子ども水泳教室の成長性を取り上げているのを見て、早速、帯広と同じ寒冷地である東北のスイミングスクールを視察。「冬に泳げない帯広で、通年営業の温水プールは受け入れられる」と感じ、進出を決断したのです。

周辺は「石油販売会社がスイミングスクールなんて、まさに“水と油”だ」などと揶揄したものですが、ベンチマークした競合を徹底的に研究し、優位性を磨くことでやっかみを跳ね返しました。

1989年にTSUTAYA、1992年にはびっくりドンキーにFC加盟。この際も私は、フランチャイジー会社に出向き、長短を余すところなくヒアリングしました。私は当時、泳げもしなかったし、レンタルビデオもほとんど見ていませんでした。ですから、こうした視察には、必ず「事業を任せたい」と思う部下を連れていきます。

判断は私が下しますが、やろうとなったら、同行した部下に全権を委任して任せるためです。だから「これは」と思うところには、交通費がかさむのも構わず部下と共に視察に行くのです。その方が、後の展開が早い。現地現物主義がモットーなのです。

「これは」と思えば、部下を連れて視察。現地現物主義がモットー。

1999年、リユース事業のコアである「なんでもリサイクルビッグバン」の出店前は、アメリカに視察に行きました。商圏の大きくない十勝帯広地域だからこそ、お客様に支持されるようサービスの質の向上に注力したビッグバンはオープンから盛況で、わずか2年で全道に14店舗を展開するほどに成長しました。

同じ年、北海道初のセルフ式ガソリンスタンドを開設し、石油元売りの系列を離れてプライベートブランドとなったのも、ターニングポイントだったと思います。この時はセルフのスタンドを検証するため、北欧にまで行きました。さらに事業推進の実戦部隊をみんな北欧に連れて行き「これならできるだろ」と現物を見せました。それにより、部下たちは目の色を変えましたね。

失敗も数え切れません。1987年オープンの屋外型巨大迷路は、総工費1億円をかけた挙げ句、3年で撤退。パチンコ店も社風に合わず、6年で撤退。ゲームセンターやカラオケなど、撤退店舗数は180店にも及びます。

ですが、これも良い肥やしです。事業を任せた部下が赤字を出したからといって、閑職に追い込むようなことなど絶対にしません。結果責任は私にあるのですから。重要なのは、スピードです。難しいと判断したら、迅速に止める。ダラダラ続けても、従業員のモチベーションを損なうだけです。

個人を第一に置く教育プログラム「3KM」が、グループの横串に。

一見バラバラの各事業を、横串で貫いているもの。オカモトグループらしさの基盤となっているもの。それが3KMです。

3KMとは(株)土屋ホールディングスの創業者・土屋公三氏(故人)が開発した教育プログラムで、3つのKは「個人・家庭・会社」の「経済・健康・心」を、3つのMは「目標(Mark)・管理(Management)・意欲(Motivation)」を表しています。

「会社」よりも「個人・家庭」が先に来ているのが3KMの真髄で、まず個人が人生の目標を設定し、家族が共に目標を立てることを大事にしています。「会社」第一に考えるプログラムとは全く異なるため、どんな業種の、どういった立場の人も受け入れやすいのです。

3KMに出会った私は、いつものように部下を連れていき、インストラクター資格を取得してもらいました。私自身もやりますが、社内教育の旗振り役に社長がでしゃばると、ろくなことにならないですから。

3KMは社内にどんどん浸透し、今や社内に150名以上のインストラクターが誕生しました。もはや私が口を出さなくても、オカモトグループのフィロソフィーとして確立しています。

原価低減・無駄排除の「TOPS」の思想は、あらゆる業種に通用。

もう一つ、当グループにおいて重要な基盤の役割を果たすのがTOPSです。これはトヨタ生産方式をオカモト流にカスタマイズした、「原価低減・無駄の排除を徹底し、お客様に質の良いサービスを安価で提供する」思想・活動のことです。

職場は2S(整理整頓)3定(定まった物を定めた位置に定めた数だけ置く)に始まる、という考え方は、メーカーだけでなく小売・サービス業にも通用します。店舗運営を最適化すれば、無駄な動きがなくなる分、従業員も働きやすくなり、サービスの質も上がるものです。

端的な例ですが、ウチのガソリンスタンドには、男性だけではなく女性客もたくさんきます。理由は「トイレがキレイだから」。TOPSの浸透した職場では、バックヤードのトイレを清潔にしておくなど、基本中の基本です。それがお客様を呼び込むサービスとなっているわけです。

3KMとTOPSを軸として、接客業であることを意識したCS教育、内部監査やコンプライアンスなど、オカモトグループにおけるガバナンスの仕組みを整備しています。この仕組みは前述のように、どんな業種にもあてはまり、すぐに運用ができるものです。

M&Aした会社に対しても、最初にこの仕組みを紹介します。M&Aで買収された側の従業員は、どのような経緯であれ、不安に思うもの。ですが私たちが最初にガバナンスを示し、「豊かな人生を送るため、個人の目標設定からスタートしましょう」と語ると、みんな安心してくれるようです。

介護、リサイクル、指定管理などで新たな動きが始まる。

今後も、グループ内の内部資源を連携させる形で新たなサービスに取り組むオーガニックグロースと、M&Aなどで新市場への参入を図るノンオーガニックグロースをバランスよく併用しながら、事業を進めていこうと思います。

特にM&Aに関しては今も毎日案件が飛び込んでくる状況で、事業発展には欠かせません。既に動き出しているものもあり、介護やリサイクルといった領域で、新たなサービスが始動しそうです。

また公共施設の指定管理や、公共サービスの外注化といった領域にも可能性を感じます。例えば学校の部活などで私たちがお手伝いできることもあるかもしれない。「道の駅」の運営受託も始めました。やはり公営では非効率な面があるので、公共施設や道の駅にTOPSなどを導入すると、サービスの質が格段に上がります。

指定管理などの官民連携事業は、それほど利益が高いわけではありません。しかし地域貢献になるため、働く従業員たちのモチベーションも上がるんです。利益では測れない好影響がある、と感じています。

重視するのは、肌が合いそうか、コミュニケーション能力があるか。

こうした動きを展開するのに必要なのが、人材です。成績が優秀であるとか、営業力がすごい、などはあまり気にしません。重視するのは人間性ですね。

お客さんや同僚の気持ちがわからない人間に、人心掌握はできない。優秀な人は、何でも自分でやろうとするが、それでは限界があるし、下が育ちません。コミュニケーション能力と言ってもいいかもしれません。周囲と協調できそうか、社風に肌が合いそうか、そういった点を見ています。

事業会社の経営陣やカンパニー長は、同じDNAを継承してくれていると実感します。私は私自身の得手不得手を知っているので、事業可能性の決断はしても、実行はその能力を持った人間に任せてきました。「結果責任は私が全て取るので、あなたは事業執行にまい進してほしい」と。

オカモトグループが殻を破り続けてきたのは、部下を信頼し、任せることができたからではないか、とも思います。これからも、その姿勢は変わりません。部下を信じ、任せて、個人としても企業としても成長を継続したいと思います。

編集後記

コンサルタント
鈴木 絵理

1店のガソリンスタンドから全国に600店以上、グループ売上1300億円を超える企業に成長させた岡本代表。代表のお話から、創業期から変わらず時流を読みながら常に新たなビジネスを考えチャレンジし続けるエネルギーを感じました。そして、北海道のマーケットでは難しいのでは、と思われる事業でも、国内外問わず複数名の社員を現地視察に同行し全権を任せる、事業が失敗しても結果責任は自分にある、というスタンスが、スピード感ある経営と社員の成長を生み出していると痛感しました。M&Aが進み、会社規模が拡大しても現在の社風を失わず、全国で存在感を増していく同社が、今後どのような事業を展開していくか、とても楽しみです。

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